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イシス

2010.08.27
 きっとこの短編集は「不思議な話」という焦点に絞ってに集めたんだろうなあ…と神話「イシス」、幻の子供が登場する「雨の日の訪問者」、血を止める超能力少女が出てくる「ハトシェプスト」という話の舞台の統一感の無さ(日本だったりエジプトだったり神話の世界だったり…。)にそういう解釈を当てはめて強引に納得したものでした。目的の為ならば手段を選ばない男らしいハトシェプスト女王も登場し歴史物好きな私としては感無量でもあった短編集でした。

 イシス…「ツタンカーメン」にも収録されており記事で散々語ったので今回は割愛。

 雨の日の訪問者…久仁子「私ってダメねぇ。こんな小さな子にすぐ本気で怒ってしまうから。寛容さが無いんだわ。やっぱり人間、子供を育てないと本当の忍耐力はつかないのかしらね。」

そういう問題じゃねえよ…!と不法侵入の果てに壁に落書きをしているベルちゃん(確実に躾けられてないだろ)及び、それを許している甘~い久仁子さん(将来の義母)にツッコミを入れてしまったものでした。「考えようによっちゃ面白いじゃない。」と幻の子供を受け入れる気持ちになったらタイトル通り晴れてからは現れなくなり(せっかく壁に紙を貼り遊ぶ用意までしてたのに、この子は…。)拍子抜けしたこの話。後に分かる事ですが久仁子さんの結婚相手の姪っ子が当のベルちゃん(鈴子)でありローマに勉強に行きたいから子供の世話なんかしていられない(就職じゃなくて勉強ね、ふーん…。)と兄夫婦に子供を託す(押し付けている)ベルの母親に母娘揃って何だかな…とげんなりしてしまった話でもありました…ゲフッ!

 ハトシェプストⅠ…メヌウ「私はセシェンがずーっと憎かったのだ。男だけではなく女の心をも持って行ってしまう、そして血を止めることも、私が守ってやらねば何も出来ないと思っていたあの子が実は全てを持っている。」

美麗な外見、血を止める超能力は確かに持っているものの、知恵遅れであるのを良い事に男共に良いように体を開いている発情した動物並のセシェンの生き様が人間として本当に幸せなものなのかと問われると色々考えてしまう所は有るのですが…ともあれそんな妹をなんだかんだと言いながらも結局見捨てることはせず死んだ時も涙したメヌウ(セシェンに愛を語る男共も憎しみを語るメヌウ本人も口先では何とでも言える。大切なのは行動であり「力」を利用しながらも食事その他の「対価」をきちんと与え最後まで面倒を見ていた彼女)は、やっぱり良いお姉さんだったように思える私です。(実際の介護が綺麗事だけで済まないように、こういう家族の世話は大変である。)結果、殺されるイメージだけで死んでしまった妹に、恋しい人(ハトシェプスト)の側にいることすらできなくなった展開に「家族も恋も全ての望みを絶たれた」事から予言の力を開眼させたメヌウ(「ああいう力は何かと引き替えなんだそうな。」byミイラ工房の男)ですが、ギリシャ神話のカサンドラ王女よろしく誰もその的中率100%の予言に耳を傾けてくれていない辺りが痛い結末でした…ゲフッ!

 ハトシェプストⅡ…ハトシェプスト「なぜ泣く?兄上が亡くなられたからだ。間違ってもあの女の為ではない。」

紀元前1521年のエジプトを舞台に紡がれるハトシェプストの少女時代(…少年時代?)の話です。ミケネ(クレタ島)の巫女ロドピスはやはりエジプトに差し向けられた刺客だったのか(結果的に王家に害を成せるのなら跡取り息子の殺害でも良いと側室を後押ししただけなのか?)はたまた何人もの男と春(体)をひさがねばならない境遇(男への憎しみ)から自分に迫る男2人をぶち殺したくなっただけなのか(毒を盛られて死んだアメンモーズ王子同様、国王も危うく玉座の下に巣を作ったコブラに殺される所だった。)謎は残るものの、ともあれ父にも母にもマトモに相手をして貰えていなかったハトシェプストにとっては腹黒い女であろうとも「初めて自分を抱いてくれた恋人」である事実には変わりがなく女性との経験(「男になった」という事なんでしょうね…役割的に。)から「男」としても落ち着いた様子です。そして「ハトシェプストⅠ」に続いて行きます。
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日出処の天子③

2010.06.15
 この話を始めるに当たって物凄い影響力を受けた「隠された十字架」の作者・梅原猛先生との対談が載っている巻です。聖徳太子があまりにも「伝説化された偉い人」だと読者がついてこれないから人間的な欠点や傷を負った存在(美少年で超能力者で同性愛者)にした事や、歴史家にとっては盲点になっている蘇我毛人(入鹿や蝦夷はよく取り上げられるが毛人はちょうどその中間に隠れてあまり出てこない。)に焦点を当てた点、何人も「太子の子供を産んだ事実」だけは通さねばと男から男へ転々として生まれた子供達を太子の席に入れさせる女にされた刀自古郎女(酷い結末だな。)、などなど色々な登場人物の出生譚が拝めて個人的には楽しめたものでした。「歴史上の事実は変えられない」中からどれだけ魅力的な人間ドラマが描かれていくか、独断と偏見の元でもどれだけ紙の上の人物に血と肉を吹き込めるか、その辺が作者の力量だよなと改めて感じ入る次第です。

 菟道貝蛸皇女(大姫)…「酷い!酷い!お母様はこの私を大后にしては下さりませぬのね!私、大王以外のお方は嫌でございます!」

…と言ってはいたものの見目麗しい厩戸王子の姿に実はすっかり気に入ったのか次に会う時にはしっかりおめかしをしており、ツンデレが昂じての口の悪さ・偉そうな態度は相変わらずなものの王子の出来た受け答え(「なるほど、あなたはお怒りになられた方がよりお美しいのですね。」「…王子の方が役者が一枚上手だわ。」by女官)にあっさり縁談には納得した様子でした。(まだ口先では文句を言っているけれど。)しかし当の王子は自宅での宴を蹴る為(母親への当てつけの為)だけに伯母の宴に出席しただけ(母ではなく伯母の「息子」として役者のように出来た演技を見せていただけ)で大姫の事は全くどうでも良かった(むしろ女は大嫌い)のですが…世の中、知らない方が幸せという事実は往々にしてあるので口先はどうあれ本気で恋してしまった大姫の為にも余計な事は語らずにおく事に致しましょう…ゲフッ!

 蘇我毛人…「あのように心騒ぐ女性に初めて会ったと思ったら、またも厩戸王子だったとは…(ホモにならない為には)どうしたらいいのだ。」

と、じいに頼んで阿部の女と関係を持つに到った彼。しかし肉体関係だけ持っても相手に恋ができる訳でもないし心は全然騒がない(「女の為の装飾品や衣装を持ち帰る段取りすら思い浮かばないなんて、そりゃお前、惚れてないからだよ。」by雄麻呂)という様に多少拍子抜けしているようです。(対して厩戸王子の方は女連れで仲良く遠乗りしている彼の姿に思わず地震を起こしてしまうほどショックを受け、他の女ととうとう一線を超えた事実に泣くほど心が騒ぎまくっている訳ですが…ゲフッ!)結局どうでもいい女よりも家族よりも「あなたに捨てられる位なら私は死にます。」と言わんばかりに冬の湖に飛び込んだ厩戸王子のほうが断然心配になってしまう毛人。冬の寒空に着ていた服まで差し出して馬に乗って一生懸命自分を救おうとする下半身の方はどうあれ心はまだ厩戸王子の元にある毛人の姿に厩戸王子も妥協するに到ったご様子です。毛人が美人の布都姫に出会い厩戸王子の縁談にさえ何も感じなくなってしまうほど熱烈な恋に落ちてしまう(とうとう「女」に心まで奪われてしまう)のはこれからの話ではあるのですが…ゴフッ!ごく近い未来に待ち受けている修羅場にはツッコミを入れずに今はただ仲の良い2人の姿を読んでいく事に致しましょう…ガフッ!

 善信尼(嶋)…嶋「……。」
調子麻呂「……。」
毛人(な、なんて長い沈黙だ…。2人の溢れる想いが伝わってくるのが分かるが、何とか言え!じれったい!)

当時まだ安全を保障されていない船旅でもしかしたらこれが永遠の別れになってしまう(かもしれない)その時にする事は愛の告白でしょうに(その為に仕事まで休みを貰ったんじゃないのか?)今更になって自己紹介で終わっている様にはどんだけピュアな2人なんだ!?(「じれったいほど清い関係なんだから…。」by毛人)と思わず含み笑いが出てしまったものです。ちなみに善心尼が出立する時に彼女に惚れた男が見送りに来たとも帰国時にも会いに来たとも史実(日本書紀)上では何も書かれておらずこれは厩戸王子の一番の味方である舎人の彼すら他の女に恋する普通の人間で異端な王子の本当の理解者にはなりえないという伏線も含んだ捏造エピソードだったのだろうなあと思うと切ないです…。

 物部布都姫(石上斎宮)…布都姫「蘇我の馬を借りる位ならば舌を噛み切った方がましじゃ!」
毛人「私だとて半分物部の血が流れているのだが…親兄弟、一族郎党全てを滅ぼされた者にしてみれば、あれほど罵るのも当然のことだろうな。」

2人共、物部氏の血を汲む者(後に泊瀬部大王の妃として入内する布都姫は毛人の母親の異母妹)として関連があること根底にを面白く料理したこの新しい一目惚れエピソード。(それにつけても毛人は面食いなのだなあ…。)「せっかく親切に馬を貸そうとしたのにあんまりだ!」と出会って早々に消滅しかけた恋愛フラグも彼女が狼藉者の魔手に掛かろうとしたその時に王子様のように駆けつけて救った事もあり(現実の王子様(男)達が女を置いて逃げる事が多いこの世の中「そのお方に乱暴を働くと承知せぬぞ!」と登場したのはかなりポイントが高いだろう。古典的だが。)長~い間斎宮で過ごして男への免疫なんてゼロだった布都姫はその後しげしげと届けられた贈り物のおかげもあってあっさり陥落してしまった様子でした。(最悪の初対面がすっかりときめきメモリアルに…ゲフッ!)とはいえ真面目な彼が女への贈り物を届けまくっている(既に「お世話」になった阿部の女にさえ放置プレイをしているあの毛人様が!)様に毛人の新しい恋は秘めているつもりが周り中にバレバレで速やかに厩戸皇子(よりによった人物)にまで伝わってしまい、邪神の使い(嫉妬の権化?)と化した王子が早速2人を引き裂くよう手を打ち始められたおかげで、毛人の恋が実るのはまだまだ先の話になりそうです…ゴフッ!

 余談…男×男の同性愛に対して、少女達は作品に自己投影をしており出てくる素敵な男性と結ばれたいのは「理想的な女性登場人物」ではなくて「本当の自分自身」なので自分の好きなその作中の男性が彼女と結ばれてしまうとある種の嫉妬が出てしまう、だから男同士の方がいっそ楽だと書かれていて(その辺で男性編集者を説き伏せるのに苦心されたそうです…。)なるほど、そういう心理なのかと思わされたものでした。(そんな事言っても現実に自分が話の中に登場できる訳もナシ、当の男登場人物が幸せになるには作中で「別の女」を見つけるしかないと思うのだが…。)浮気の中でも「男が相手なら許す」という女性がいるのはそういう事なのでしょうね…ゲフッ!

日出処の天子②

2010.06.15
 蘇我氏と物部氏の争い、泊瀬部大王弑逆、と話の中の歴史上「戦い」は山とあるのですが、後書きで「歴史をホームドラマにしましたね。」と言われている通り、戦場で大立ち回りをするアクションシーンでなく「食卓があって皆、周りに集まって向かい合って喋ってる図」(まさしくホームドラマ)が多い、なのに緊迫感を感じるという内容の濃いシリーズです。しかし作者に言わせれば「歴史はホームドラマの積み重ね」であり、男達の「進むも地獄、退くも地獄、なれば進みて我死なん。月よ、わが屍を照らせ。」なんて考え方(それが「戦い」だと思っている。)だからこそ食料の事とか全然考えないでガダルカナルで無駄死にしたんだという発言に力強く頷けてしまった、そんな後書き対談の言葉でした…。

 穴穂部王子…宅部「少数派になった神道派より馬子の側に着く方が得策ではないのか?」
穴穂部「守屋を裏切るのか!あの馬子に頭を下げろというのか!?」
宅部「要は大王になるための手段だ。大王になって、それから蘇我とゆっくりやり合うのが順当ではないか。そなただとて、それほど神道に固執している訳でも無し…。」
穴穂部「そんな事をしなくても俺は大王になれる!」

せっかく頭の良い友達の忠告を受けても本人がバカ過ぎて聞き入れないとあってはどうしようもない…という歴史的事例でした。仏教(蘇我派)に寝返って保身を図る案を蹴った挙句に、美女(守屋の娘・豊女)につられて物部側にフラフラ食いついた(またか!)結果、穴穂部王子は史実通りに「蘇我側の刺客に殺された」(この話では厩戸王子本人が出向いたという面白いフィクションが肉付けされている。が、王子様が自ら手を汚すなんて、本人が言っているように「それは夢です。」と断言できる有り得ない展開でもある。)様には彼らしいマヌケさと合わせて思わず失笑してしまったものでした。(「穴穂部…だから廃仏派の守屋と組むのは辞めろと、あれほど止めたのに。玉座を目の前にして、お前の前途は洋々たるものだったのに。」by宅部王子)しかし、そんなバカな男にも家族(姉・穴穂部間人媛)がいて、友人(宅部王子)がいた訳で「邪魔者が1人消えた」だけで事態は収まらずに修羅場になっていきます…。

 泊瀬部王子…厩戸「年齢から言っても妥当ではありませんか。彼は崇仏派でも廃仏派でもありませんよ。何か問題がありますか?」
馬子「いや、別に…ただ、考えてもおりませなんだので…。」
厩戸「誰もが考えてもみなかった人物…それが肝心。毒にも薬にもならぬ…そうではないか?」

要するに「無能」だから御輿の上に乗せておくには最適な人物だろうやり手で自分で政治を始めちゃう大王より、身の程を知っているバカ王の方が大臣達の好きに政治が出来る。)という事で誕生した泊瀬部大王(別名・宗峻天皇)ですが、問題は御輿の上に乗っけたとたんに増長して、俺様ワガママし放題な大迷惑大王になっちゃった展開でした。無能な小者らしく、一生縮こまって身の程をわきまえていれば良かったものの、大王にして貰えた恩も忘れて威張り散らすようになってしまった。「人の影に隠れて与しやすい小心者」だから大臣達も彼を推しただけで、大王の立場になったとたんに「自分なら何をやっても許されるんだから!」と後足で砂をかけるような真似をし始めた彼に馬子も白い目を向け始めた(「これはマズイ…このお方は派手好きの見栄っ張りときた。しゃしゃり出てこない小者だと読んでいたのだが…。」by馬子)様には後の展開が透けて見えたものでした…。

 物部守屋…「ここで退けば後が無い。この湿地帯を出れば我々に勝ち目は無いのだ。わしはあの木に登るぞ。あそこからなら蘇我の動きが丸見えだわ。」

地の利(泥土)を活用し、さらに全景を見る事で効率良く正確な攻撃が仕掛けられるようになった訳ですが、裏を返せば指揮する人間(総大将)が全体を見渡せる場所(木の上)から指示をしている事は良く考えればバレバレ(そして携帯の無いこの時代、必ずその木の真下で指示を聞く人間がいる。)で、冷静に状況を見れば彼がどこにいるのかは予測がついた事でしょうね。(「まさかわしがここにいようとは誰も思うまいて。」「そうかな?」by厩戸王子)おかげで史実でもこの話でも舎人の淡水(とみのいちい)に射殺されるという結末を迎えてしまった彼。大将を亡くした動揺で物部側は総崩れとなり、息子の梯麻呂は討ち死に、弟の贄子は囚われの身となり、ここに廃仏派・物部氏は大和朝廷から姿を消したのでした…。(それで栄えた勝者の蘇我氏が孫の入鹿の代には大化の改新で滅ぶのだから、本当に歴史とはオセロである。)

 竹田王子…額田部女王「私の竹田を返してくりゃれ!申し訳ないで済むものか!私の竹田は戻らぬ!」
厩戸「竹田王子は仏になられるのです。このまま静かに見送ってやりましょう。」

戦に出してしまったおかげで、当の王子達は「箔付け」の為の参戦で「まさか朝廷を敵に回してまで『王子』である自分達を攻撃したりはしないだろう。」とやる気ゼロの有り様(自分で戦う気なんか始めからありゃしない。)だったというのに、額田部女王(後の推古天皇)の息子という、よりにもよった人物が死んでしまったのでした。「蘇我氏側の王子なんて全滅してしまえ!」と、次期大王候補の穴穂部王子を失い、家臣・中臣勝海を殺され、唯一・錦の御旗になりそうな彦人王子にも見限られたトリプルパンチで自棄も起こしていた守屋達(オマケに守屋達は八十物部氏と謳われるほど同姓氏族が多い一族な上に、歴代の軍事力を誇る軍事のベテランであった。)は、もう勝手も外聞も構っていられなかった結果です。(そして数でこそ3倍近く勝っていた蘇我氏側は政務担当で軍事に関しては素人だった。)戦場に命の保証なんてどこにもありはしないという常識論でした…。

日出処の天子①

2010.06.15
 「今はっきりと見えている恐るべきライバル」「馬子を潰すせっかくのチャンス」などなど当時の人間が絶対に使わない外来語は出てきてしまっているものの恋愛沙汰だけでなく個々の利益の為に動く、腹に一物ある一癖も二癖もある登場人物(そして綺麗事を言う裏で腹の探り合いをする)や魑魅魍魎が跋扈する霊的な世界観、そして何より主人公・厩戸王子を中心とした作品を通しての毒々しい魅力にそんな細かい事は全然気にならなかったものでした。(要するに池田理代子先生の「聖徳太子」がつまらなかったのは恋愛描写ばかりで政治的駆け引きも無くフラストレーションも無い単純な人間しか描かれていないからだと認識できました。)という訳で「聖徳太子」ではなく内面的な妄執に苦しむ「祟り神」とも言える「厩戸皇子」の物語です。

 穴穂部王子…穴穂部「小僧っ子のお前に年上の色香が分かるか!」
泊瀬部「だからと言って、相手は大后だろう!」

額田部大后に対して「魔が差した」のは厩戸王子の超能力(透視能力)が働きかけたのがきっかけだったとはいえ問題の根源は一瞬裸の姿が見えただけで速攻で理性を忘れてしまう彼の軽率さにこそあったように思います…ゲフッ!(母親は笑う厩戸を不気味がっていましたが、これは間違いなく笑うシーンだろうとツッコミを入れてしまいました…ゴフッ!)「腹に一物持つのは好かない」とはいえあまりにも考え無し・勢い任せの行き当たりばったりの行動の数々(「彼の長所も短所もこの軽率さの中にある」とはいえ…。)にはやはり大王にふさわしい人物とは思えず彼がトップ(大王の位)に立たなかったのは正解だったと改めて感じたものでした。(池田先生も山岸先生も彼の性格に対する描写は同じなのね…。)という訳で次の大王は豊日大兄王子(用明天皇。聖徳太子の父。)に決定し話は続いて行きます。

 三輪君逆…額田部女王「確かにこれには忠義を尽くして貰った。だが彼の思惑が彦人王子にある限り将来必ず私の子、竹田王子の大王への道への大きな壁になる。今は心を鬼にしてこの者を…。」

三輪君を破滅の道(彼を殺したがっている穴穂部王子ご一行とはち合わせの文字通り滅亡の道)に導いたのは女孺に扮した厩戸王子ではありましたが王子は破滅への最後のダメ押しを手伝っただけで元々、人々の思惑はそこにあった事を思うとむしろ彼よりも周りにいる人間の方が余程怖い(厩戸は「先を読んだ」だけ。彼が手伝う事が無くとも遠からず同じ結末を迎えるしかなかった。)とも感じてしまったものでした。忠義を尽くし貰っても都合が悪くなるとサッサと手の平を反す、人間とはそういう物であり、お涙頂戴の感動ドラマ(池田理代子先生版)に仕立て上がっていない分リアリティを感じた最期でした…。

 穴穂部間人媛…厩戸王子「私以外で苦界奥底の魑魅魍魎の流れを見たのはそなたと母上だけだ。最も母上は気配を感じただけだが、それで母上は私を恐ろしく感じているのだ。」

どうやら厩戸王子の才能(霊能力・超能力)は母親から受け継いでより強く開花したものらしいですが本来「同じ世界」を感じる事ができて一番の理解者になるはずの母親自分よりもなお強力に異質に生まれついてしまった息子を全否定する方向に走ってしまい日常生活はもちろん人前でも厩戸を「いないもの」として扱うようになってしまったようでした。それもあって「同じ世界」をよりハッキリと感じながら自分に対して恐怖を抱かない(良い意味で育ちの良い)毛人は厩戸にとっても意外な存在であると同時に「この人なら信じても良いのではないか」という淡い期待も抱いてしまったのでしょうね…。そのまま上手く関係を築いて行けたら良かったんですけどね…。

 用明天皇…厩戸王子「父上、あなたが今ここで死ねば私の手はこれから先、血に染まるのです。貴方はご自分の息子にそのような事をさせたいとお思いですか。そうお思いでなければ力を振り絞って下さい。」

人前でも憚らず弟(普通の子供)の来目王子をえこひいきする母親とは違い一応体面上は息子として接してくれていた(家族としての関わりは母親と同じく薄かったが人前では父親としての義務的立場は果たしてくれていた)からこそ、そのわずかばかりの縁に縋って黄泉の国の使者から父親を守り声をかけたのに父親は息子に応える事なく(息子の事など気にせず)黄泉の国に旅立ってしまったのは文字通りの悲劇だったでしょうね。(「そなたは泣かぬのですね。」以前にもう泣けないほど絶望が深かったのかと…。)誰も厩戸の本当の悲しみを理解してくれていない様が哀れで思わず同情してしまったものでした…。

天人唐草

2009.12.07
 天人唐草というのはイヌフグリの別名だそうで、イヌフグリ(「犬の金玉」。果実が犬の陰のうに似ている事にちなんでいる。ゴマノハグサ科の1、2年草で道端、原野などによく生える。ちなみに、こんな名前でありながら花言葉は「神聖」。)の意味さえ知らなかった私としては感心すると同時に草花一つからここまでの話を描きだしたのは凄いなと素直に感動したものでした。という訳で5人の「子供」の「生きるという路上に置いて迷っている」迷い子達の話です。

 天人唐草…部長「さあさ、一杯。未成年なんて白けること言わないで…青柳ちゃんを見なよ。君より一つ年上でああだよ。」
響子「こんな人達と一緒の職場か…。上手くやって行けるかしら。」

会社という体育会系の縦割り社会でこういう時に1人だけ「いい子」になるのはタブーである。(特定の集団の中では常に正しい行動を取る事が理想的な結果を生むとは限らない。)別に無理して飲む必要はないが、佐藤さんのように相手に失礼の無いようにのらりくらりと上手くかわすか、宴会を盛り上げる腹芸の一つもする(何かで笑いを取る)べきであるし、すましていても↑のように内心彼らを見下している気持ちだって伝わるし(そもそも「仲間」だと思っていないから宴会一つマトモに相手しないんでしょう?音痴の女性が一人特訓して見事に歌えるようになった例があるけど、あなたは「皆の為に」何かした?)つまはじきにされてしまうのも何となく理解できたヒロインでした。悩んでいるのは分かるけれど自分の事しか考えていない女とは確かにやっていけないだろうな、と心ひそかに憧れていた新井さんにも見合い相手にも相手にされなかった(従順であること、でしゃばらないこと、それが女性の美徳であると自分を正当化し、その裏の「何でも相手任せで自己犠牲を払わなくて済む」という虫の良い依頼心と甘えには見て見ぬふりをし続けた。16、7の小娘ならどんな幼い性格でも「可愛い」という範疇に入れたかもしれないが(「育てる」まで長~い年月が掛かっても10年経ってもまだ20代である)、30を目前にしてそれでは男は一から彼女を「子育て」する気にもなれないだろう。)事にも頷けてしまったものでした。これは昔の少女漫画によく出てくる「自己の無い女」(高校も大学も就職先も「彼氏と同じ所」。確かにそういう女って男を失った後の生活をどうするんだろうと心配にはなる。)の悲劇だなと納得した話です…。

 ハーピー…川堀「佐和君が時々、私をジッと見てるのは知ってました。出来るだけ気づいていないフリをしてたけれど、そのうち帰りに後をつけてくるようになって…気味が悪くて一度勇気を出して、こんな事をするのは辞めて下さいと頼んだんです。それ以来、学校でも私の顔を見るのは避けるようになったので諦めてくれたんだとばかり…。」
友人「あいつ…内向的な奴だったから。成績も思わしくなくてノイローゼ気味だなとは思っていたんだけど…。」

「彼女が女面鳥獣(ハーピー)だなんて、この現代にそんな馬鹿げた事が起こり得るだろうか?」という主人公本人の一人ツッコミにあるように、そんな馬鹿げた展開がある訳もなく全てはノイローゼ(頭の病気)の元にストーカー行為を悪化させていった主人公の妄想だったという結論には(視点が主人公目線だった事もあり)意外に思いながらも頷いてしまったものでした。振り返ってみると彼を呼ぶ声も、コウモリの羽も全部主人公以外の人間には見えていなかったし(つまり幻臭に幻聴に幻視のトリプルパンチか。どんだけ脳に来ていたんだろう?)たとえ本物のハーピーでもシャワー中(!)に中に押し入って絞め殺そうとするのは完全アウトですし、確かに壊れていた(頭おかしい)のは主人公の方だったと改めて得心した話でした。思えば川堀さんの「憎しみに燃えた目」も正体を知った彼に対する本能的な嫌悪ではなくて、ストーカーに向ける「便所コオロギを見る時と同じ目」だったのだろうなあと1人納得もしてしまったり…ゲフッ!

 狐女…理(まさる)「親父は女なら誰でも手を出したんだね。たった一人(正妻)を除いては。アンタにはお義理で征一ひとりだものね。分かってたよ。アンタはお義理だよ。」
義母「出ておいき!人でなし!お前は人の子じゃない!お前なんか犬畜生にも劣るんだ!お前は父親と娘との間に生まれた畜生以下の子なんだよ!お前はあの狐憑きの聖子と夫との間の子なんだ!化け物!」
嫡男・征一「お母さん、辞めて下さい!相手は子供ですよ!それを言ってはダメだ!」

早熟で血の繋がった年上の姪っ子(!)にまで性的悪戯を繰り返す悪魔のようなクソガキではありましたが、その外面の悪さ(良くは無い。彼がもう少し媚を売るとか場を読む事の出来る要領の良い子供だったら、こんな結末は迎えなかっただろう。)は母親を知らず妾の子供である自分に白い目を向けてきた世間へ対しての「武装」であり、泣きわめくかわりに悪意と知恵を手に「対決」してしまうから結果として自分でいらない敵まで作って放り出されてしまったんだな、と納得してしまいました。夫に浮気されまくりのトラウマを喚起させた上に図星を指したことで義母を逆上させ、同レベルに立ってキレた義母(「お母さん、辞めて下さい!9歳の子供相手に大人気ないですよ!」by征一)が同じようにベラベラと秘密をしゃべって言い返した事から全ての真相を知ってしまい「実母」を見つけたその時には本物の迷い子になってしまった…というのは何とも悲しい結末です。「稲荷屋敷を利用できるだけ利用する」どころか、はした金を掴まされただけで追い出された結果にも涙してしまった話でした…。

 籠の中の鳥…人見さん「飛んだね、ついに。しかも飛んできて捕まえて引きずり戻すなんて君の一族の誰もがやれなかった事だ。君のお婆さんだって死返魂(しにかえしだま)をやる時は亡くなった人の声を聞き取るのが精一杯だったんだよ。」

祖母に、一族に、トリとして生きることを宿命づけられながらも「飛ぶ」ことが出来なかった為に保護者である祖母の死をきっかけに村から放り出されてしまった融(とおる)。(そのままだったら養護施設に入れられてしまう所だった。)そんな半生を辿ってきたが故に人見さんに引き取って貰っても、優秀な成績を修めても「飛べないブタは、ただのブタさ。」(by紅の豚)というように「飛べないトリ」(役立たず)であることに不安を拭い去る事が出来なかった訳ですが、人見さんが融を引き取ったのはそんな「研究材料」としての野心の為ではなく、純粋に人間としての情だった(「僕は君をどこへもやらないよ。そんな軽い気持ちで人1人を引き取ったんじゃないよ。」by人見さん)というオチの元に、この本の中では唯一ハッピーエンドを迎えた話です。思えば祖母の存命中に霊が見えた事をうっかり口にしてしまっていたら村から解放される事も無かったでしょうし、五体満足に生まれついた事といい奇跡のような確率で幸せになった子だな、と色々な意味で拍手した話でした。

 夏の寓話…スミちゃん「10年前の夏の朝、あたしは広島で死んだ。そのまま6つの女の子。いつまでたっても6つなの。」
真ちゃん「石か土が血を含んでいるこの地を我々は忘れてはならないんだ。」

留守番に行ったお爺ちゃんの家がある「北海道と真反対のH市」って広島の事ですか!と「ハロー原爆、朝ドラ終了後」(1945年の8月6日(ハロー)朝8:30=連続テレビ小説放映後)と受験生時代にロクでもない覚え方をした広島原爆の日(スミちゃんの回想ではちゃんとカレンダーの日時が8月6日になっている。)と合わせて納得してしまったものでした。霊能者によると原爆の日、中心地にいた人達だけは「一瞬で蒸発した」為に苦しむ事もなく幽霊になってもそのまま時間が止まっている(怨恨の念も苦しみも無く死んだ事も分かっていないまま無害な霊になっている。)ものの、中心地から多少離れた所にいた人達は「死ぬまでの間」苦しみ続けた為に「助けてほしい」念の強い悪霊(というか化けて出る怖い霊)になっている事が多いそうで、「あたし、燃えた…。」と死ぬまでの苦しみを知っているスミちゃんは残念ながら後者の例だったんだろうなあ、と涙ながらに感じた、そんな夏の寓話(日本の夏らしい怪談話)でした…。
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