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エニシダの五月

2009.11.12
 黄金の拍車シリーズ6作目にして最終巻です。後書きでは「この後まだ短編集が1冊出る予定なので、あんまり感慨深くはない」と書かれていたのですが、ネットでもそんな本が出たという情報は無く(まあ、「実際にどうなるかは未定」と書かれてましたし、「ネタが無いですよ、担当さん!」と作者自身も始めから難色を示していましたしね…。)「担当さんの美しい計画では岩崎画伯の漫画も入ったりお楽しみページも充実の短編集になる予定!」とありながら、これで本当に最後となってしまったようです。今から出版するというのは、もう10年近く前の作品にもなるし、やっぱり無理があるんでしょうね…。ブログのトップに書いた匿名さん(元々このシリーズを買っていた人。「足の無い獅子」編完結と同時に買うのは辞めた様子。)とか挿絵の為だけに買って絵の質が落ちてきたから買うのを辞めた人は沢山いそうな気がしますし今さら復活は無理なんでしょうね…。(リチャードとギルフォードが腹も出て脛毛も全開のオヤジだったら始めから誰もこのシリーズを買わなかっただろうと思われ…ゲフッ!)

 ガストン・ド・ベアルン…リチャード「彼が国王陛下に楯突いてガスコーニュを独立国に仕立て上げようとしたことは知ってます。バーネル司教がその騒動の調停役を果たされた事も。」

軍を進められた為に渋々屈服はしたものの、納得はしなかった様子でフランス王フィリップの元に走り「ガスコーニュの宗主はフィリップ様でしょう。じゃあ、そこを自分のものだと主張しているエドワード王は1人で誤審(勘違い)しているだけで、これってフランスへの反逆罪じゃないですか!」「ガスコーニュがわしの物…か。イイね、それ!」と利害が絡み合ってこじれにこじれたこの事態、結局フランスと「多少の事には目を瞑ってこれからも仲良くしましょうや。」(お互いの主張がほぼでっち上げという事は分かっているけれど、こんな事の為に「戦争」する事は無い。)と外交上の駆け引きの元に終結したのですがもしも一方だけが「主張は言いがかり以上の何物でもない」と公にされたらどうだっただろうか?(そりゃ鬼の首を取ったように脅しつけて言う事を聞かせていただろう。)という設定の元でのフィクションストーリーです。細かい歴史事項も調べながらの執筆で辻褄を合わせるのにも色々大変だったろうなと思ってしまった最終話でした…。

 リチャード・フィッツロイ…「宮廷は俺のような田舎者が快適に暮らせる場所ではありません。もし、お許しを頂けるのなら俺は自分の領地で静かに暮らしたいと思っています。」

若者らしい野心(いつか血筋にふさわしい立場(宮廷)に返り咲いてやる!)が欠片もなく、縁側で日向ぼっこをしている枯れ果てた老人のように相も変わらずやる気の無い彼。確かに王家の血筋の者だと認められ黄金の指輪(アンジュー王家の異名ともなったエニシダの枝の模様が刻印された指輪。かつてこの王家の祖となったアンジュー伯ジェフリーが好んでそれで帽子を飾った為にトレードマークになったらしい。)まで与えられたものの結局シリーズの最初から最後まで田舎でのほほんと暮らす人生で終わるのでした…。普通だったら「王家の人間」なのにあちこち傷がついてへこんだ使い古しの指輪をあげるから、それ(だけ)で満足してくれという展開に「ふざけるな!俺だって血縁として同等に遺産を貰う権利があるだろう!」と同母兄弟ですら骨肉の争いに発展する場面なのですが、争う心が無いというのは面倒臭くなくて良いものです。最も今の彼は家(領地)持ちで充分暮らしていけるので、争う必要も無かったのでしょうが…ゲフッ!

 王弟ブライアン…「君こそ何故こんな所で身を縮めて暮らしている!?同じ王家の血を引きながら、彼らは権力の中枢に居座り我々は日蔭者として蔑まれる!どうして君はそんな事に耐えられる!?」

唯一彼を庇ってくれるはずの母親はリチャード同様出産時に亡くなったのか、彼の側にいないだけでなく誰も彼女がどんな人間なのか口を開こうとしない(「母はどこの何者なのか判らない。(息子なのに)私には知らされていない。」byブライアン)恋人もいない(持参金目当てとはいえ目をつけているレディ・メリッサはさっぱりなびいてくれない。それどころか目の前でギルフォードに色目を使っている。)友達もいない(弟とはいえ「国王に嫌われている人間」「一緒にいると自分まで謀反を疑われそうな男」ということで誰も積極的に近づいてこない。)そんな中で兄弟達との差(えこひいき)を見せつけられて育った彼はすっかり心が歪んでしまわれたご様子です。それを思えば叔母夫婦という「両親」に愛情を注がれながら育ち、友達(ギル)も恋人(娼婦ジェイン)もいるリチャードは本当に恵まれているよな(「井の中の蛙」という現実はある意味では幸せな事なのかもね…。)と改めて思うきっかけにもなった登場人物でした。リチャードのように野望なんか持たなければ長生きできたでしょうにね…。

 レディ・メリッサ…スティーブン「面目を保つのには金が掛かる…莫大な額が。その問題を一瞬で解決できる機会をみすみす逃すことは出来なかった…。」
ダニエル「国王陛下を裏切ってまで、保たなければならない面目をお持ちとは。」

「衣食足りて家名を欲す」(正しくは「衣食足りて礼節を知る」。明日生きられるかも分からない貧困生活では略奪、万引き、何でも有りだが物質的に恵まれていれば精神的に病んでいない限り人間は品行方正に暮らすものである。)とはよく言うものの、金が有っても人間的に腐っている奴はいるようで、娘に贅沢なドレスと宝石を買い与えながら、面目(贅沢)を保つ為だけに告訴を無効化した手紙(下手をすればイギリスとフランスの戦争を招きかねない代物)を金の為だけに売ろうとした父親に「…。」と思ってしまったものでした。(生活に困るのなら、簡単な話で贅沢なドレスやら宝石やらを売って金を作れば良い話じゃないのか?)その後、国王の庇護下に置かれる事になっても充分な持参金は持っている娘(簡単な話で贅沢なドレスやら宝石やらを以下略。)の売国奴になっても豊かな生活基盤に、ぶっちゃけ無駄な事をしたな(売るのは国じゃなくてプライドの方にしとくべきだったね。)と父親に思わずツッコミを入れてしまった物語でした…。
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麦とぶどうの恵みより

2009.09.18
 黄金の拍車シリーズ5作目です。中世カトリック教会に関する資料(普通の本屋に売っているような本では到底カバーできないようなマニアな知識)を買いに行こうとした所その週一杯お盆休みで買えなかった(カトリック教会付属の書店で何故、仏教の行事である「お盆」休みに!?)という事情も有り執筆が散々遅れ、合わせて絵担当の方もお宅まで資料を取りに行くほど切羽詰まったスケジュールだったそうです。(それで発行が遅れたのか…。)ちなみにこのシリーズも次巻で再度最終章を迎える(5冊以上行ったという事はやっぱりそれなりの人気は有ったんでしょうね。)そうで、どんな終わり方をするのか楽しみな所です。

 デ二ー…「明日以降は何もかもが上手くいくはずだったのだ。」

物語開始2ページ目にして既に死んでしまった登場人物です。正しく殺意をもって殺されたというのに大司教ウォルター・ジファード毒殺(の実験台)の疑いから真相にたどり着くまでも大分遅れてしまい、周りの人達からの関心の無さ(「誰が何の為に奴なんかを殺す『手間』を掛けるって言うんです?元々死んでようと生きてようと大差無いような奴だったのに。」と誰もデ二ーの死を気にしていない。)も合いなって事件解明はズルズルと放置されてしまっていました。実際には神に仕える待祭の密通のネタを握って脅迫した故に相手から口封じに毒殺された立派に動機のあった殺人事件だったのですが、それ以前に皆が彼に無関心だったという人気の無さから死んでもスルーされてしまったデ二ー。人望があるという事は大切な事なんだと実感させてくれる実例です…ゲフッ!

 マギー…「父は母を騙し貧しいまま放置した。娼婦だってお金を貰えるのに、それ以下の扱いをしたのよ。」

恋に目を曇らせたまま死んだ母親にとっては貧しさも苦労も日陰者になるのも「献身の喜び」に変換できたのかもしれませんが、恋情など抱いておらず事実関係を冷静に見れる娘にとっては避妊もしないでセックスし養育費も渡さずに放置して1人大聖堂で悠々自適に暮らしている父親に嫌悪感を覚えるのは当然のなりゆきだろうと私も納得してしまいました…ゲフッ!(金はあるけど噂が怖いから渡さないって…文字通り父親が自分で撒いた種で全ては自業自得でしょうに責任は取りたくありませんと言うのは勝手過ぎるだろと恨まれる展開に頷いてしまいました。)彼女が作った毒入りの菓子は他にも毒が盛られていた為に父親の死因とはなり得ませんでしたが(2重に毒を盛られていたなんてどんだけ恨まれていたんですか、ファーザー・セオドア様!?)殺したくなるほど憎しみを募らせる動機は十二分に理解できてしまった登場人物でした…ゴフッ!大聖堂という神聖な場所なのに昼メロ並のドラマが繰り広げられています…ガフッ!

 セオドア・ネヴィル…「娘が自分を恨んでいる事は知っていた。『妻』が死んでも何もしなかった事を詰った。娘の目には憎しみが宿っていたがそれを真っ向から受け止める事が自分にできる唯一の償いだと考えた。」

そこで(同じ毒入り焼き菓子を食べて死ぬにしても)自分の立場も顧みずに娘に財産を分け与えた、父親としての扶養義務を遅ればせながらでも果たしたというのだったら、まだ感動できたんですけどね…ゲフッ!(娘になら殺されても構わないという自己陶酔以前に、そんな事をすれば娘は親殺しとして重い罪を背負い一生を台無しにしてしまうとか、実の娘のその後の心配はしないんですか…?)結局、この人にとっては聖堂参事会員として神に仕えることが何より大事で妻も娘も世間体以下だったという真実しか伝わってこずに全然共感できなかった人物でした。(「娘に責められるのから逃げもせずに受け止めている俺、エライ!」とか言われても世間から非難される展開からはまんまと逃げおおせて隠蔽に走った人間が何言ってるんだか…としか思えない。)本当は妻も娘も愛していて頭の中だけでは気にかけていた(母娘に経済的な援助をしたいと思ったが思っただけで実行はしなかった。その頭の中だけで自己完結している感情を人は妄想と言う。)と懺悔で書いても彼が何より一番愛していたのは自分の世間体だった事は見え見えで娘に恨まれるのも納得の身勝手ぶりです。母親の葬式にも顔を出さない親父では実の娘であっても毒を盛りたくなるだろうと展開には納得してしまったものでした…ゴフッ!(正確な死因はエグバート待祭が持ってきた毒入りワインの方で実際には娘は親殺しをせずに済んだ訳ですが何はともあれ娘のこれからがおぼつかない展開は変わらない。父親としてどうなんですか、それは!?)

 エグバート…セオドア「神に仕える身である以上、愛人とは手を切るように。別れないのであればこれを公の問題にする。」

愛人に子供まで産ませて死ぬまで隠蔽したアンタに言われたかないわ!(むしろ愛人とずっと切れもせずに菓子を届けさせてラブラブしていたアンタこそ公の場で裁かれるべき人間だったろう。)とセオドア様にツッコミを入れてしまった説得でした。(セオドア様、人を責める立場に立つなら自分の手が汚れていない人間でなければならないという「クリーンハンドの法則」って知っていますか?)結果としてエグバート待祭が毒を持ったのは秘密を知って強請ったデ二ーとセオドア様の2人だけで大司教ウォルター・ジファードは病による全くの自然死だった(毒など盛られておらず助かりようが無かった)事が判明し無駄に動いた挙句に毒殺されかかった主人公2人に同情もしてしまったものです。最後は愛人を殺そうとしたのも見つかってヤケを起こして飛び降り自殺を図った彼。リチャードがとっさに射殺してくれたおかげで「自殺」にはならなかった(か、どうかは微妙)なのが唯一の救い…ですかね?(クリスチャンにとって自殺は罪であり死んだら地獄行き、墓にも入れなくなるので他殺の方がまだ幸せな死に方ではある…理論上は。)愛人と気晴らしをして知られた人間は毒殺する彼といい、被害妄想100%の誹謗中傷手紙を出すウィリアム・ウィックウェイン聖堂参事会員といい神父様が集まる場所(大聖堂)にしてはここにはエグイ人間しかいないと幻滅もした物語でした…ゲフッ!

花嫁の立つ場所

2009.09.17
 黄金の拍車シリーズ4作目です。今回は著者の近況の代わりに同人誌に掲載された巻末漫画が再録されていますが、なんというか昔の方が絵が綺麗で丁寧で現在の劣化の程が改めて実感できただけに思わず悲しくなってしまったものでした。(トーンを使わなくなっても「丁寧に描かれていた」点では短編集の頃が1番上手かったけれど、今は…。)足の無い獅子シリーズは買っていたのに新章に入ってから買わなくなった友人の動機がちょっと理解できてしまった(要するに、挿絵の為だけに買ってたんだな、あの人…。)そんな巻でもありました…。

 ピート…給仕「モニカは十日ほど前、仕入れに行ったピートが荷馬車で帰ってくる途中、道に倒れていたのを見つけて、そのまま『拾って』荷台に乗せてきたって言うんです。」
ギル「何だそりゃ。どんなギャルゲーのフラグだよ!」

合コンにも結婚相談所にも行かないまま恋人が空から降ってきた(出会う努力を何もしないまま都合の良い相手が転がり込んできて一気に同棲まで関係が進む)なんて、そのまんまチープな恋愛漫画じゃないか(もう既に古いネタですよ、それ…ゲフッ!)とツッコミを入れてしまったピートの春でした。とはいえ妻も息子も昔に亡くしてこのままリチャードの保護者で一生を終えるのもどうかと思っていたので嬉しいフラグイベントではあったのは確かです。そんな訳でタイトルは「花嫁の立つ場所」となっているもののリチャードもギルフォードも結婚した訳ではなくピートの元に嫁が来ただけという女性読者を手離さない展開で話は終わるのでした…。(ジェイン達娼婦の皆さんの立場はどうなってしまうのか一瞬真剣に心配したというのに、紛らわしいタイトルをつけないで下さいよ、もう…。)

 モニカ…「もっと前に彼に出会えていたら…。」

男の価値は若さの度合いじゃないと同世代の夫レムとの大失敗した結婚生活において学んだだけに、見る目は確かになったようです。(寡黙だけど誠実で男らしいピートを選ぶとは中々見所があるじゃないですか。)挙句に当の相手(ピート)が自分を庇って傷を負いながらも暴漢から救い出してくれた(…という役目は大体男主人公こそが引き受ける場面なんですけど、何やってるんだ、2人共。)とあっては惚れ直してしまうのも仕方ないですよね…ゲフッ!お互いに自分の子供を失くした経験を持ち、だからこそ絆が深く築けそうな2人。正反対の性格で補い合って良い夫婦になりそうだと結末に頷けたものでした。(それにしても下手したら1ダース以上年の離れた相手と再婚したなんて、ある意味武勇伝である。この時代じゃ珍しくない年の差なのかもしれないが。)

 オーソン…「ネッドとマイクは主人の金と共に城から姿を消していました。彼らはその犯罪を俺がやったものとして吹聴し多くの者がそれを真に受けて俺を罪人として裁こうと待ち構えていたのです。」

無断外出と失踪を繰り返す前にそれを説明してよ…!(そうすれば犯人探索の為と分かるし助力もできたではないですか。)とツッコミを入れてしまった書記の不審な行動でした。結果として彼は罪を被せられただけの被害者だったわけですが城という「組織」で働く以上は(住み込みで24時間仕事先と関わっている状態ならなおさら)報告・連絡・相談が必要だという常識も学ぶべきだと語りかけてしまったものです。今回の主要登場人物の一人ではあるのですがモニカの昼メロストーリーが印象的過ぎて存在感の薄かったキャラクターでした…ゲフッ!

 マイク…モニカ「兄弟そろってアンタ達はどうしようもないろくでなしだったわ!」

なのにアビーといい、君といい、何でこんな兄弟と結婚したのさ…?と思わず疑問も出てしまった義理の兄(旦那の兄)です。彼らの前に親の影が全然見えない辺り「親が決めた結婚相手」という訳でも無さそう(恋愛結婚したは良いものの結婚後になってから相手のDV本性が分かったというパターンの臭いがする。)ですし、きっと顔だけは良かった兄弟だったんだろうな(で、そんな麗しいお顔は3日で見飽きて衝動的に殺してしまうほどの憎しみしか今は感じなくなった、と…ゲフッ!)と邪推もしてしまったものでした。最後は殴られた拍子に自分が持っていたナイフの上に転んでしまって自滅死を遂げた彼。反射神経が鈍いのなら凶器なんて始めから持つなよとマヌケな死に様にツッコミを入れてしまったものでした…ゴフッ!

針は何処に

2009.09.11
 黄金の拍車シリーズ3作目です。この本の著者校正を終えた直後、徹夜明けのままロンドンに旅立ち「力の限り観光し血へど吐くまで買い物する」というスローガンの元に死にそうになりながら旅行した(死んでしまうわ…。)という著者近況も読めるなかなか楽しい巻です。ロンドンに到着しただけで、店内のあらゆる所にホームズ縁の品(と称するもの)が展示されているパブに行っただけで、シャーロック・ホームズ博物館に行き、チェルシー・フラワー・ショーを見て、ウィンブルドン博物館に行き、事あるごとに「もう、思い残すことは無いわ!」と言う伯母さんのエピソード(場所ごとに思い残すこと増えてますよ!)も見れて面白い旅行記でした…。

 オズワルド・ハンズリー…使用人「アンタはどうしても国王の財産をちょろまかす計画が書かれた羊皮紙を取り戻したい。俺達はそれを隠したガキを捕まえている。ここで一つ報酬の相談でもしましょうや。」
オズワルド「毎月の給料はちゃんと渡しているのに心得違いはいい加減にしろ。貴様の主人は一体誰だ?」
使用人「だからその関係を1度見直した方が良いんじゃないかと思ってね。」
オズワルド「ぐっ…(泣)」

王家の財産を盗もうと画策し、罪もない人間(ヘンリー)を身につけていた装飾品(サファイアの指輪。祖父の形見であり真実ヘンリー氏の持ち物。)を利用して泥棒の濡れ衣を着せた悪人ではあるのですが目的の人物には逃げられ、部下には裏切られ、一緒に画策した仲間(の部下の暗殺者)には殺されたどこまでも報われない死に様には思わず同情もしてしまったものでした。結局周りの人間の謀略に振り回されただけで終わってしまった彼。妻も子もいるのにこの人の家族はこれからどうなるんだと別の心配もしてしまったものです…ゲフッ!

 サー・ジェフリー…ならず者「最初からそういう話だったろう。あいつはオズワルドを始末したがっていた。それを俺達が代わりに始末してやった。それだけの話だ。」

正確には動いていたのは彼の部下たる暗殺者の君(名前はまだ無い。死ぬまで無い。)なのですが計画の証拠を握ったスパイとその部下の口を封じる事は良しとして(良くねえよ!)仲間の事も最初から利用するだけ利用して抹殺する事を考えていた辺りオズワルド氏よりも極悪度は高い御仁です。せめてもの救いは無事に計画が国王に筒抜けになった(スパイが五体満足に生き延びて国王の元まで辿り着いた)おかげでこれから彼にも社会的制裁が下るという所でしょうか。あなたを殺した張本人もちゃんと「地獄」に落ちてくれたよと不幸の中で終わった悪人(それでもジェフリー氏に比べれば大分優しい御仁である)オズワルド氏に慰めも入れたものでした…ゲフッ!

 マーク…「自分がどこから来て何をしているのか一切他人には喋らないと誓いを立させられました。主人が誓いを解いてくれるまで僕には何も言えません。」

スパイ活動をするにしても一人旅は辛いよね(そして従者のいる「騎士」ならともかく部下の一人も雇えない生き倒れの路上生活者では誰も家に上げてくれないだろう)という事でヘンリー・ウォード氏に仕えている小姓です。彼の背格好がたまたま主人公達の従者のトビーに似ていた為に迷惑な人違いを起こされ誘拐事件が勃発してしまいました。(人違いで攫われた挙句に殺されかけたトビーは良い迷惑です。)事件の真相に関しては口を噤むし主人公サイドで読んでいると全くの役立たず状態ですが主人(ヘンリー)の「信頼できる部下」としては秘密はきちんと守る人間として価値はあったんだろうなと読み返して少し評価を上げた登場人物です…。

 ヘンリー・ウォード(ダニエル・ハワード)…リチャード「あなたはオズワルドとジェフリーの行っていた不正行為について隠密に調査をなさっていたんですね。」
ダニエル「『服の中に縫い込まれ気づかれぬまま買い手に渡った針のように』ね。こっそり懐に潜り込んで痛い目に合わせられるだけの物を掴んでこいという事だ。」

短編集にも名前だけ登場した(挿絵は描いて貰えなかった)ジョナサン神父の2番目の兄貴です。国王陛下の間謀という立場も有りジョナサンの「使える人間」なら下心目当てに助けるという信念から箸にも棒にも引っかからなかったケネス兄貴に対する態度(「扱いが不満?知るか、んなもん!自分がうっとおしい厄介者だという立場をもっと自覚しやがれ!」byジョナサン)とは偉く違って大切に扱われています…ゲフッ!家の跡継ぎという目立つ立場には立てないけれども出来る奴ではある(プロの暗殺者並に大立ち回りをするのは無理があるけれども物色能力・情報収集というスパイの特性は高い)というのは隠密行動をしてくれる「影の部下」としては理想的だったのかもしれません。(で、国王陛下のお気に入りになったと…。)近隣の若い女性を次から次へと口説いて刃傷沙汰にならなかった(どの女も何故か彼を許す憎まれなさがあった)人当たりの良さも武器にしてターゲットに近づく彼。リチャードの館でも「被害」を出しながら問題にはならなかった(「俺の召使いの女達が彼のベッドに潜り込んだとしても自ら望んでそうしたってのなら俺が口を出す問題じゃない。」byリチャード)辺りも対人社交術の高さが伺えます…ゴフッ!ジョナサン神父の司祭らしからぬ女好き(たびたび娼館に出入りするほどの常連。自分の立場に目を瞑って金を出してまで女と寝たいですか…。)はこの兄貴の影響も有りそうです…ガフッ!

白い矢

2009.09.04
 黄金の拍車シリーズ2作目です。この本では中世らしく馬上槍試合(トーナメント)が開催されており(なのに肝心の主人公2人は参加していない。とことん中世騎士物語の王道から外れた話ですな。)しかしこの物語当時(1278年)一騎討ちの試合は行われておらず、もう少し前の時代になると騎士たちは広大な土地を自在に駆け回り敵方の騎士を捕まえてはその財産を分捕るという見物人(人の目)もへったくれもないまさに戦争を繰り広げていたそうで(中には1日に何度も捕虜になってしまう哀れな人もいたんだとか…そんなに弱いんなら試合に出てくるなよとか中世の人々ってバカばっかりかもとか作者からも合理的なツッコミがなされてました…。)実在人物と共に背景まで色々調べられている事に感心もした2冊目でした。

 サー・ジェローム…ジェローム「俺の指輪がなくなったんだ。貴様が盗んだんだろ!」
リチャード「人を泥棒呼ばわりする前に頭を冷やしてよく探してみたらどうだ。不注意でどこかに置き忘れたという無様な結末になった時、恥をかくのはアンタ自身だぞ。」

そのリチャードの言葉通りにメレディスの部屋に置き忘れただけであり、何故、彼の部屋にいたかというと一緒になってコーンウォール伯を失墜させる為の不名誉な噂を広めるためだったという事実まで明るみになってしまい、自分で目立つ行動をしてしまったが為に決闘を申し込まれそうになるわ、主人公達に脅されるわ、(結局指輪は証拠品として返ってこなくなってしまうわ)散々な目に会ってしまった彼。自業自得という言葉の良い見本を体現してくれています。悪いことは何でも人のせいにして影で噂や悪口を言っている人間は最期には誰も手を差し伸べてくれなくなる(「下手に騒げば俺はアンタがやった小細工の全てをぶちまける。」byギル)という生きた実例です…ゲフッ!

 レディ・エレイン…エレイン「そんな根も葉もない人を中傷するくだらない噂を流しているあなたこそ始末されてしかるべきよ!もし私が男だったら今すぐあなたに決闘を申し込む所だわ!コテンパンにぶちのめしてその気取った顔を飼い葉桶に突っ込んでやるわよ!」
ギル「レディ・エレインは美人だが、でもどこかうちの婆さんに通じるものがあるように思うのは気のせいか?」

美人だがいわゆる女傑タイプであるレディ・エレイン(「実際に決闘を申し込んでいたとしても彼女は勝ったさ。この剣を賭けてもいい。」byコーンウォール伯)夫のウェイド(彼に決闘を申し込まれたら後は遺書を書くしかすることは無い)と合わせて超体育会系のカップルだなと思わず笑ってしまったものでした。(子供が生まれたら体育会系のサラブレッドでしょうね…ゲフッ!)本編の事件とは関係のない人間で主人公2人をもてなしているだけの人物ですが良い味を出しているキャラクターだと好感を持った女性でした。

 サー・マーティン&コーネリア…コーネリア「アルヴィンが弓を引いたと嘘の証言をすれば現場監督(執行長官)である父の罪は問われないと、そう言われて…彼には申し訳ないと思っていました。」
アルヴィン「俺がサー・マーティンが弓を引いた所を見たって話したらお二人は大法官殿に雇われて大芝居を打ってるんだって教えてくれました。」

全ては自分達の結婚資金という金の為に、容疑者に仕立て上げられたアルヴィンまで見返り(金)が貰える事にその状況を甘受している辺り、金による人心掌握の力は物凄い事を実感させてくれるエピソードです…ゲフッ!結果として無駄な人(アルヴィン)探しに労力を割き、いわば事件の黒子である2人に散々に踊らされたけれど、彼らには彼らの事情があり基本的には悪人ではない(金が絡まなくても人を悪く言って陥れようとするジェロームとは違う。)と許している主人公達。より酷い実例があるとそれより悪くない物はマシに見えてくるという現実の証明のようなお二人でした…ゴフッ!

 大法官ロバート・バーネル…リチャード「つまりバーネル殿はサー・マーティン達を使って狂言の暗殺事件を仕立て上げ、その罪をサー・ブレイスに被せようとした、と。」
トビー「自分を狙わせた矢が本当に当たっていたらどうするつもりだったんでしょう?」
リチャード「きっとバーネル殿は僧服の下に鎧でも着こんでおいでだったんだろう。あれだけ太ってるんだ。あと少し厚みが増したからって誰も気付きやしないさ。」

真相は暗殺者の弓の腕が悪かった(「上から下に矢を討ち込むのは楽な仕事ですし、あの時は風も無かった。あの距離で的を外す事はありえません。俺だったらあなたの眉間をぶち抜ける。」byリチャード)のではなく全ては狂言だったというオチがついたこの話、おかげでパシリのように使われた挙句に無駄な労力を費やされた主人公2人(それが主人公といえども王家や教会中枢区の人間に比べると身分の低い彼らの悲しさ)や振り回された周りの人間達はいい迷惑です。実在人物を使っているとはいえこの話自体はフィクションであり本気に取らないで下さいと後書きにも書いてあったのでタイトルの所以にもなった「白い矢」を使わせた本当の黒幕ではありますが信じないで読み進めていきましょう…ゲフッ!
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