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西洋男娼館~エキドナの掟~

2011.05.31
 先月、友達がネット上の友達が宮城の人で東日本震災以降姿を見せなくなってたことを心配していました。そこまではいいんです。それよりもネット上に姿を見せなくなったからと言って相手の履歴から住所(宮城県)を割り出した友達の執念に恐怖を感じました。…皆、親しい相手がネット上に見えなくなると1ヶ月以内に住所を調べるものなのでしょうか?
 友達曰く「色々親身になって相談にも乗ってくれた人だから、早くに住所を聞き出しておけばよかった。」(だからって調べるものなの?「相手のことが気になるからついつい家まで尾行しちゃった❤」というストーカー少女とどう異なるのか違いが分からないのですが…ゲフッ!)との事でしたが、いくらネット上で仲良くても所詮顔も本名も知らない者同士。会ったこともなく「会いたい」という話も出ておらず、それはネットでどんなに親身になっていても現実の友達認定はされていないということじゃないのかな~と友達の思い詰めぶりに疑問を感じてしまう私です。
 そしてネット上に姿が見えないのを気にしているのも「その人と話したいから。」という「自分の都合」が見えてそれは本当に「心配」なのかな?と疑わしく思えるのです。「心配」している割にはガソリンの略奪が各地で起きていた(宮城含む)ことも、福島で原発処理を頑張っている自衛隊の皆さんがJヴィレッジの客室から締め出されて雑魚寝してることも(宮城って福島の隣り。万一の事があったら一緒くたに被害を受けてしまう地域です。)分かっていなかった、というか知ろうともしていなかった彼女にむしろ調べるべきはそっちだろ!とツッコミを入れたくなってしまいました。(「心配」と言っている割に相手を気遣う心が見えない…!)
 人間関係って何でしょうね?ということでホモの話を更新です。(どんな関連だよ!)これもまた人と人との関わりについて色々考えさせてくれた話でした。

 タイトルからして物凄い名称だなと思ってしまった吸血鬼物語。ちなみにエキドナと言えば聞こえはいいですが英語でいう所のハリモグラのことです。そう考えると別にハリモグラの祝福が与えられなくてもハリモグラの掟を破ってももうどうでもいい気になってくるんですが作者さんは何を持ってエキドナの館としたんでしょうね?ちなみにエキドナはギリシャ神話に登場する上半身が美女、下半身が蛇の化物の名称でもありケルベロス、ヒュドラ、オルトロス、スピンクス等々多くの怪物を産んだ母でもあります。多分作者さんは「母なる怪物の館」という意味合いでこの名称にしたんでしょうね。それにしたっていきなり男娼館というタイトルには度肝を抜かれました。「エキドナの掟」だけじゃタイトルにならなかったのでしょうか?…ゲフッ!
 また魔女狩りについて異端審問があるのは知っていましたが断罪するには教会の承認が必要なこと、それを狙って貴族や豪商からの賄賂を受け取って私腹をを肥やすシステムは初めて知ったので吸血鬼が霧状になる能力(意外に知られてないらしい。)と共に良く調べているなあ~と感心した話でした。

 ルチカ・エリュミオン…ガジェットにさえ好かれなければ「裏切り」の為に家督の座を義理の叔父(スレアム)に奪われることもなく「秘密」の為に母親の生死を隠されることもなく、挙句の果てには執事の専属男娼に貶められることもなく(伯爵家の当主様が…!)どんだけ幸せで豊かな人生を送れたんだろうと考えると悲しい主人公です。(ガジェットも一線は越えていなかったものの既にそういう仲にはなっていたのだから「契約」にこだわらずに執事という名の恋人としてルチカを支えていけば良かったのでは…?やっぱりこの展開はガジェットの手前勝手な都合に思えます。)最終的に家督を取り戻したと思ったら本家まで差し押さえられているほどの貧乏生活が待っており(希望的観測通りスレアム叔父さんがどこかに財宝を隠していた…だといいんですけどね。それにしたって本人がアルデリアに殺されてしまった今、探し出すのは困難だろう。)ルチカじゃなくても「ガジェットが最初から余計なことをしなければ…!」と怒るのは無理もない展開だと思ってしまいました。ガジェット曰く「それが契約の規則だから。」だそうですがそこまでして契約をする必要性は別にルチカの方には無かったような気がしてならないので性格の悪い無能な主人公(復讐計画も調べ事もガジェットを頼りにするだけで的確な命令さえできていない。超有能な執事がいなかったら一緒くたに邪教徒として殺されていただろう。)ではあっても同情してしまいました。伯爵様なのに哀れな少年です…ゲフッ!

 マルクス・R・ガジェット…この話の全てはこの人の勝手(ルチカを自分の主にする為。)のせいです。ドラキュラの特性として初めて訪問した家では家人の招きが無ければ入ることができないので、あそこでルチカが「部屋においでよ!」なんて言わなければ悲劇は始まらなかったのにね…と読みながらガックリしてしまいました。「愛する者の精があれば万能にもなれる」そうですが精というのは元気・生気という意味で別に精液のことをさしているのではないのですが股間限定の元気ということでOKなのでしょうか…ゲフッ!(下品でごめんなさい…ゴフッ!)血でも有り(まあ、無いと貧血起こして確かに「元気」から遠くなるしね。)だということでミュラーなどは女(レミリア)と契約しており、つまり女とも契約はできるのに何故エキドナの館ではホモ限定なのだろう?とツッコミ所は満載でした。ともあれ契約までの過程(秘密と裏切りを設定しそれでも愛されれば本契約に移行する。それって相手を試している最低な茶番では?)も契約後の条件(側にいなければその人間の魂は抜け殻になってしまう。つまり愛が冷めても離れられない。)も吸血鬼に対して美味し過ぎ(そして主であるはずの人間の条件は厳しい。)だと思うのは私だけでしょうか?自分だったら吸血鬼との「契約」は絶対にできないなと確信を持ってしまいました。許せたルチカは凄いです。

 スレアム・エリュミオン…短期間のうちに莫大な伯爵家の財産を使い果たした男。(ある意味勇者。)この男にあのまま家督を任せた場合間違いなくエリュミオン家は破綻するので遺言状を書き変えたオズワルドおじいちゃんは(見た目だけで人を決めた最低の選び方だったとはいえ)正しい判断をしたと言えるでしょうね。本妻の子(レミリア。自分は後妻の連れ子。そしてルチカは本家の孫。)を仕込みたかったが執事(ガジェット)のガードで手を出せずじまいだったという最低発言(そして女装したルチカの股間に触れたとたん「なんだこれは!?」とドン引きしている辺り)からこの男はホモじゃないことが分かりますがそれはそれとして女を性欲処理の対象としてしか見ていない最悪の男だということも分かります。そんな自分の無能ぶりも分かっていて(そして開き直っている部分がありそう。)切り札として吸血鬼アルデリアと契約していますが、その際外法(生贄の儀式)を使っただけにサバト疑惑は余計に信憑性を増したでしょうね。ともあれ元々血縁的には縁の無い財産だったのを思う存分好き勝手できてある意味幸せな男だったと思えるのは私だけでしょうか?せっかく家督を取り戻したと思ったら別邸と執事以外全部差し押さえられていたという状況のルチカが哀れでした…ゲフッ!

 アルデリア…外法(生贄制)とはいえ「契約」している分、不完全契約の吸血鬼よりは強いようです。主が怪我しても吸血鬼には伝わらないが、吸血鬼が傷ついた時の傷はそのまま主人へと負わされる(じゃあルチカは何故無事なんだ?)…このシステム的にそこまでして吸血鬼と契約する価値があるのか疑問なのですが、霧になって移動出来る辺り情報を集めたり暗殺系のこと(鍵をかけても霧になって中に入れます。)は楽々行えるので、それを見越して契約をしたんでしょうね。(むしろ今回のように戦い中心になってしまっている事態が異常なのだ。)戦いの最中さりげなく(というより直で)ルチカに「完全契約の方法」を言っている辺りよっぽどスレアムのことが嫌いだったというのが伺えます。(そしてあの展開を招いている。)下手したら百八つにして殺されていたはずなのに血まみれのまま(手当てしなよ。)躍進し(ジャンプする必要はあるかなあ?)主人の首を切り落としている辺りに憎しみを感じました。それはともかく今まで「主従」である以上はルチカ達と同じくあの方法で回復していたのでしょうか?そうだとしたら、なるほど契約解除後ぶち殺すわけだと納得してしまいました…ゴフッ!

 ミュラー牧師…ルチカの父親。吸血鬼のくせに牧師になるなんて牧師のくせに子作りをするなんて…等々色々考えてしまったキャラです。普通、幽霊、悪魔とかの魔物って塩(清めの塩とか盛り塩とかあるし。)も水(聖水というものがあるし。)も苦手のはずなのに吸血鬼にして海(塩水)の魔物という設定は無理が無いでしょうか?と思ったのですが十字架やニンニクも含めての退魔法は吸血鬼を題材にした映画を作る際にドラキュラの個性を際立たせる為の演出に使っただけでガジェットの言うとおり効果はないそうです。真実消滅させる方法は吸血鬼の心臓に杭を打ち込む、首を切る、死体を燃やす他、死体を水かワインで洗う、葬儀をやり直すことだと読んだ覚えがあります。(元々吸血鬼は架空の存在でしたが作品ごとに表現が異なりどんどん本来の物からズレていってしまったようです。)そんな訳でこの話の吸血鬼さん達は頭から塩をかぶろうがニンニクを食べようが全然平気のようです。
 ルチカの母・レミリアとは単なる恋仲ではなくちゃんと「契約」を交わした主従となっていますが彼女に設定された「秘密」(自分が吸血鬼ということとか?)と「裏切り」(父親と本人の了承を得ずに誘拐→同棲に至ったとか?)は何だったのかちょっと気になる所です。(いや完全に推理しきってるじゃんかよ。)自分を取り戻したことで改めて自分の意志でミュラーの側にいることを選んでいるレミリアでしたが息子に対してそんなあっさり手放していいのか(嘘でも「親子三人で海辺の町で暮らしましょう。」とか考えないのだろうか?)ミュラーも父として「寂しい思いをさせてすまなかった。」と一言(だけでも)謝ろうとか思わないのか?…等々、親としては微妙な2人だなあと思ってしまいました。最後は乳母のマリーまで奪われてルチカはいい迷惑です。

 余談…ゴメン、人と人じゃなくて人と吸血鬼の話でした…ゲフッ!
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日出処の天子③

2011.05.07
 この話を始めるに当たって物凄い影響力を受けた「隠された十字架」の作者・梅原猛先生との対談が載っている巻です。聖徳太子があまりにも「伝説化された偉い人」だと読者がついてこれないから人間的な欠点や傷を負った存在(美少年で超能力者で同性愛者)にした事や、歴史家にとっては盲点になっている蘇我毛人(入鹿や蝦夷はよく取り上げられるが毛人はちょうどその中間に隠れてあまり出てこない。)に焦点を当てた点、何人も「太子の子供を産んだ事実」だけは通さねばと男から男へ転々として生まれた子供達を太子の席に入れさせる女にされた刀自古郎女(酷い結末だな。)、などなど色々な登場人物の出生譚が拝めて個人的には楽しめたものでした。「歴史上の事実は変えられない」中からどれだけ魅力的な人間ドラマが描かれていくか、独断と偏見の元でもどれだけ紙の上の人物に血と肉を吹き込めるか、その辺が作者の力量だよなと改めて感じ入る次第です。

 菟道貝蛸皇女(大姫)…「酷い!酷い!お母様はこの私を大后にしては下さりませぬのね!私、大王以外のお方は嫌でございます!」

…と言ってはいたものの見目麗しい厩戸王子の姿に実はすっかり気に入ったのか次に会う時にはしっかりおめかしをしており、ツンデレが昂じての口の悪さ・偉そうな態度は相変わらずなものの王子の出来た受け答え(「なるほど、あなたはお怒りになられた方がよりお美しいのですね。」「…王子の方が役者が一枚上手だわ。」by女官)にあっさり縁談には納得した様子でした。(まだ口先では文句を言っているけれど。)しかし当の王子は自宅での宴を蹴る為(母親への当てつけの為)だけに伯母の宴に出席しただけ(母ではなく伯母の「息子」として役者のように出来た演技を見せていただけ)で大姫の事は全くどうでも良かった(むしろ女は大嫌い)のですが…世の中、知らない方が幸せという事実は往々にしてあるので口先はどうあれ本気で恋してしまった大姫の為にも余計な事は語らずにおく事に致しましょう…ゲフッ!

 蘇我毛人…「あのように心騒ぐ女性に初めて会ったと思ったら、またも厩戸王子だったとは…(ホモにならない為には)どうしたらいいのだ。」

と、じいに頼んで阿部の女と関係を持つに到った彼。しかし肉体関係だけ持っても相手に恋ができる訳でもないし心は全然騒がない(「女の為の装飾品や衣装を持ち帰る段取りすら思い浮かばないなんて、そりゃお前、惚れてないからだよ。」by雄麻呂)という様に多少拍子抜けしているようです。(対して厩戸王子の方は女連れで仲良く遠乗りしている彼の姿に思わず地震を起こしてしまうほどショックを受け、他の女ととうとう一線を超えた事実に泣くほど心が騒ぎまくっている訳ですが…ゲフッ!)結局どうでもいい女よりも家族よりも「あなたに捨てられる位なら私は死にます。」と言わんばかりに冬の湖に飛び込んだ厩戸王子のほうが断然心配になってしまう毛人。冬の寒空に着ていた服まで差し出して馬に乗って一生懸命自分を救おうとする下半身の方はどうあれ心はまだ厩戸王子の元にある毛人の姿に厩戸王子も妥協するに到ったご様子です。毛人が美人の布都姫に出会い厩戸王子の縁談にさえ何も感じなくなってしまうほど熱烈な恋に落ちてしまう(とうとう「女」に心まで奪われてしまう)のはこれからの話ではあるのですが…ゴフッ!ごく近い未来に待ち受けている修羅場にはツッコミを入れずに今はただ仲の良い2人の姿を読んでいく事に致しましょう…ガフッ!

 善信尼(嶋)…嶋「……。」
調子麻呂「……。」
毛人(な、なんて長い沈黙だ…。2人の溢れる想いが伝わってくるのが分かるが、何とか言え!じれったい!)

当時まだ安全を保障されていない船旅でもしかしたらこれが永遠の別れになってしまう(かもしれない)その時にする事は愛の告白でしょうに(その為に仕事まで休みを貰ったんじゃないのか?)今更になって自己紹介で終わっている様にはどんだけピュアな2人なんだ!?(「じれったいほど清い関係なんだから…。」by毛人)と思わず含み笑いが出てしまったものです。ちなみに善心尼が出立する時に彼女に惚れた男が見送りに来たとも帰国時にも会いに来たとも史実(日本書紀)上では何も書かれておらずこれは厩戸王子の一番の味方である舎人の彼すら他の女に恋する普通の人間で異端な王子の本当の理解者にはなりえないという伏線も含んだ捏造エピソードだったのだろうなあと思うと切ないです…。

 物部布都姫(石上斎宮)…布都姫「蘇我の馬を借りる位ならば舌を噛み切った方がましじゃ!」
毛人「私だとて半分物部の血が流れているのだが…親兄弟、一族郎党全てを滅ぼされた者にしてみれば、あれほど罵るのも当然のことだろうな。」

2人共、物部氏の血を汲む者(後に泊瀬部大王の妃として入内する布都姫は毛人の母親の異母妹)として関連があること根底にを面白く料理したこの新しい一目惚れエピソード。(それにつけても毛人は面食いなのだなあ…。)「せっかく親切に馬を貸そうとしたのにあんまりだ!」と出会って早々に消滅しかけた恋愛フラグも彼女が狼藉者の魔手に掛かろうとしたその時に王子様のように駆けつけて救った事もあり(現実の王子様(男)達が女を置いて逃げる事が多いこの世の中「そのお方に乱暴を働くと承知せぬぞ!」と登場したのはかなりポイントが高いだろう。古典的だが。)長~い間斎宮で過ごして男への免疫なんてゼロだった布都姫はその後しげしげと届けられた贈り物のおかげもあってあっさり陥落してしまった様子でした。(最悪の初対面がすっかりときめきメモリアルに…ゲフッ!)とはいえ真面目な彼が女への贈り物を届けまくっている(既に「お世話」になった阿部の女にさえ放置プレイをしているあの毛人様が!)様に毛人の新しい恋は秘めているつもりが周り中にバレバレで速やかに厩戸皇子(よりによった人物)にまで伝わってしまい、邪神の使い(嫉妬の権化?)と化した王子が早速2人を引き裂くよう手を打ち始められたおかげで、毛人の恋が実るのはまだまだ先の話になりそうです…ゴフッ!

 余談…男×男の同性愛に対して、少女達は作品に自己投影をしており出てくる素敵な男性と結ばれたいのは「理想的な女性登場人物」ではなくて「本当の自分自身」なので自分の好きなその作中の男性が彼女と結ばれてしまうとある種の嫉妬が出てしまう、だから男同士の方がいっそ楽だと書かれていて(その辺で男性編集者を説き伏せるのに苦心されたそうです…。)なるほど、そういう心理なのかと思わされたものでした。(そんな事言っても現実に自分が話の中に登場できる訳もナシ、当の男登場人物が幸せになるには作中で「別の女」を見つけるしかないと思うのだが…。)浮気の中でも「男が相手なら許す」という女性がいるのはそういう事なのでしょうね…ゲフッ!

日出処の天子②

2011.05.06
 蘇我氏と物部氏の争い、泊瀬部大王弑逆、と話の中の歴史上「戦い」は山とあるのですが、後書きで「歴史をホームドラマにしましたね。」と言われている通り、戦場で大立ち回りをするアクションシーンでなく「食卓があって皆、周りに集まって向かい合って喋ってる図」(まさしくホームドラマ)が多い、なのに緊迫感を感じるという内容の濃いシリーズです。しかし作者に言わせれば「歴史はホームドラマの積み重ね」であり、男達の「進むも地獄、退くも地獄、なれば進みて我死なん。月よ、わが屍を照らせ。」なんて考え方(それが「戦い」だと思っている。)だからこそ食料の事とか全然考えないでガダルカナルで無駄死にしたんだという発言に力強く頷けてしまった、そんな後書き対談の言葉でした…。

 穴穂部王子…宅部「少数派になった神道派より馬子の側に着く方が得策ではないのか?」
穴穂部「守屋を裏切るのか!あの馬子に頭を下げろというのか!?」
宅部「要は大王になるための手段だ。大王になって、それから蘇我とゆっくりやり合うのが順当ではないか。そなただとて、それほど神道に固執している訳でも無し…。」
穴穂部「そんな事をしなくても俺は大王になれる!」

せっかく頭の良い友達の忠告を受けても本人がバカ過ぎて聞き入れないとあってはどうしようもない…という歴史的事例でした。仏教(蘇我派)に寝返って保身を図る案を蹴った挙句に、美女(守屋の娘・豊女)につられて物部側にフラフラ食いついた(またか!)結果、穴穂部王子は史実通りに「蘇我側の刺客に殺された」(この話では厩戸王子本人が出向いたという面白いフィクションが肉付けされている。が、王子様が自ら手を汚すなんて、本人が言っているように「それは夢です。」と断言できる有り得ない展開でもある。)様には彼らしいマヌケさと合わせて思わず失笑してしまったものでした。(「穴穂部…だから廃仏派の守屋と組むのは辞めろと、あれほど止めたのに。玉座を目の前にして、お前の前途は洋々たるものだったのに。」by宅部王子)しかし、そんなバカな男にも家族(姉・穴穂部間人媛)がいて、友人(宅部王子)がいた訳で「邪魔者が1人消えた」だけで事態は収まらずに修羅場になっていきます…。

 泊瀬部王子…厩戸「年齢から言っても妥当ではありませんか。彼は崇仏派でも廃仏派でもありませんよ。何か問題がありますか?」
馬子「いや、別に…ただ、考えてもおりませなんだので…。」
厩戸「誰もが考えてもみなかった人物…それが肝心。毒にも薬にもならぬ…そうではないか?」

要するに「無能」だから御輿の上に乗せておくには最適な人物だろうやり手で自分で政治を始めちゃう大王より、身の程を知っているバカ王の方が大臣達の好きに政治が出来る。)という事で誕生した泊瀬部大王(別名・宗峻天皇)ですが、問題は御輿の上に乗っけたとたんに増長して、俺様ワガママし放題な大迷惑大王になっちゃった展開でした。無能な小者らしく、一生縮こまって身の程をわきまえていれば良かったものの、大王にして貰えた恩も忘れて威張り散らすようになってしまった。「人の影に隠れて与しやすい小心者」だから大臣達も彼を推しただけで、大王の立場になったとたんに「自分なら何をやっても許されるんだから!」と後足で砂をかけるような真似をし始めた彼に馬子も白い目を向け始めた(「これはマズイ…このお方は派手好きの見栄っ張りときた。しゃしゃり出てこない小者だと読んでいたのだが…。」by馬子)様には後の展開が透けて見えたものでした…。

 物部守屋…「ここで退けば後が無い。この湿地帯を出れば我々に勝ち目は無いのだ。わしはあの木に登るぞ。あそこからなら蘇我の動きが丸見えだわ。」

地の利(泥土)を活用し、さらに全景を見る事で効率良く正確な攻撃が仕掛けられるようになった訳ですが、裏を返せば指揮する人間(総大将)が全体を見渡せる場所(木の上)から指示をしている事は良く考えればバレバレ(そして携帯の無いこの時代、必ずその木の真下で指示を聞く人間がいる。)で、冷静に状況を見れば彼がどこにいるのかは予測がついた事でしょうね。(「まさかわしがここにいようとは誰も思うまいて。」「そうかな?」by厩戸王子)おかげで史実でもこの話でも舎人の淡水(とみのいちい)に射殺されるという結末を迎えてしまった彼。大将を亡くした動揺で物部側は総崩れとなり、息子の梯麻呂は討ち死に、弟の贄子は囚われの身となり、ここに廃仏派・物部氏は大和朝廷から姿を消したのでした…。(それで栄えた勝者の蘇我氏が孫の入鹿の代には大化の改新で滅ぶのだから、本当に歴史とはオセロである。)

 竹田王子…額田部女王「私の竹田を返してくりゃれ!申し訳ないで済むものか!私の竹田は戻らぬ!」
厩戸「竹田王子は仏になられるのです。このまま静かに見送ってやりましょう。」

戦に出してしまったおかげで、当の王子達は「箔付け」の為の参戦で「まさか朝廷を敵に回してまで『王子』である自分達を攻撃したりはしないだろう。」とやる気ゼロの有り様(自分で戦う気なんか始めからありゃしない。)だったというのに、額田部女王(後の推古天皇)の息子という、よりにもよった人物が死んでしまったのでした。「蘇我氏側の王子なんて全滅してしまえ!」と、次期大王候補の穴穂部王子を失い、家臣・中臣勝海を殺され、唯一・錦の御旗になりそうな彦人王子にも見限られたトリプルパンチで自棄も起こしていた守屋達(オマケに守屋達は八十物部氏と謳われるほど同姓氏族が多い一族な上に、歴代の軍事力を誇る軍事のベテランであった。)は、もう勝手も外聞も構っていられなかった結果です。(そして数でこそ3倍近く勝っていた蘇我氏側は政務担当で軍事に関しては素人だった。)戦場に命の保証なんてどこにもありはしないという常識論でした…。

日出処の天子①

2011.05.05
 「今はっきりと見えている恐るべきライバル」「馬子を潰すせっかくのチャンス」などなど当時の人間が絶対に使わない外来語は出てきてしまっているものの恋愛沙汰だけでなく個々の利益の為に動く、腹に一物ある一癖も二癖もある登場人物(そして綺麗事を言う裏で腹の探り合いをする)や魑魅魍魎が跋扈する霊的な世界観、そして何より主人公・厩戸王子を中心とした作品を通しての毒々しい魅力にそんな細かい事は全然気にならなかったものでした。(要するに池田理代子先生の「聖徳太子」がつまらなかったのは恋愛描写ばかりで政治的駆け引きも無くフラストレーションも無い単純な人間しか描かれていないからだと認識できました。)という訳で「聖徳太子」ではなく内面的な妄執に苦しむ「祟り神」とも言える「厩戸皇子」の物語です。

 穴穂部王子…穴穂部「小僧っ子のお前に年上の色香が分かるか!」
泊瀬部「だからと言って、相手は大后だろう!」

額田部大后に対して「魔が差した」のは厩戸王子の超能力(透視能力)が働きかけたのがきっかけだったとはいえ問題の根源は一瞬裸の姿が見えただけで速攻で理性を忘れてしまう彼の軽率さにこそあったように思います…ゲフッ!(母親は笑う厩戸を不気味がっていましたが、これは間違いなく笑うシーンだろうとツッコミを入れてしまいました…ゴフッ!)「腹に一物持つのは好かない」とはいえあまりにも考え無し・勢い任せの行き当たりばったりの行動の数々(「彼の長所も短所もこの軽率さの中にある」とはいえ…。)にはやはり大王にふさわしい人物とは思えず彼がトップ(大王の位)に立たなかったのは正解だったと改めて感じたものでした。(池田先生も山岸先生も彼の性格に対する描写は同じなのね…。)という訳で次の大王は豊日大兄王子(用明天皇。聖徳太子の父。)に決定し話は続いて行きます。

 三輪君逆…額田部女王「確かにこれには忠義を尽くして貰った。だが彼の思惑が彦人王子にある限り将来必ず私の子、竹田王子の大王への道への大きな壁になる。今は心を鬼にしてこの者を…。」

三輪君を破滅の道(彼を殺したがっている穴穂部王子ご一行とはち合わせの文字通り滅亡の道)に導いたのは女孺に扮した厩戸王子ではありましたが王子は破滅への最後のダメ押しを手伝っただけで元々、人々の思惑はそこにあった事を思うとむしろ彼よりも周りにいる人間の方が余程怖い(厩戸は「先を読んだ」だけ。彼が手伝う事が無くとも遠からず同じ結末を迎えるしかなかった。)とも感じてしまったものでした。忠義を尽くし貰っても都合が悪くなるとサッサと手の平を反す、人間とはそういう物であり、お涙頂戴の感動ドラマ(池田理代子先生版)に仕立て上がっていない分リアリティを感じた最期でした…。

 穴穂部間人媛…厩戸王子「私以外で苦界奥底の魑魅魍魎の流れを見たのはそなたと母上だけだ。最も母上は気配を感じただけだが、それで母上は私を恐ろしく感じているのだ。」

どうやら厩戸王子の才能(霊能力・超能力)は母親から受け継いでより強く開花したものらしいですが本来「同じ世界」を感じる事ができて一番の理解者になるはずの母親自分よりもなお強力に異質に生まれついてしまった息子を全否定する方向に走ってしまい日常生活はもちろん人前でも厩戸を「いないもの」として扱うようになってしまったようでした。それもあって「同じ世界」をよりハッキリと感じながら自分に対して恐怖を抱かない(良い意味で育ちの良い)毛人は厩戸にとっても意外な存在であると同時に「この人なら信じても良いのではないか」という淡い期待も抱いてしまったのでしょうね…。そのまま上手く関係を築いて行けたら良かったんですけどね…。

 用明天皇…厩戸王子「父上、あなたが今ここで死ねば私の手はこれから先、血に染まるのです。貴方はご自分の息子にそのような事をさせたいとお思いですか。そうお思いでなければ力を振り絞って下さい。」

人前でも憚らず弟(普通の子供)の来目王子をえこひいきする母親とは違い一応体面上は息子として接してくれていた(家族としての関わりは母親と同じく薄かったが人前では父親としての義務的立場は果たしてくれていた)からこそ、そのわずかばかりの縁に縋って黄泉の国の使者から父親を守り声をかけたのに父親は息子に応える事なく(息子の事など気にせず)黄泉の国に旅立ってしまったのは文字通りの悲劇だったでしょうね。(「そなたは泣かぬのですね。」以前にもう泣けないほど絶望が深かったのかと…。)誰も厩戸の本当の悲しみを理解してくれていない様が哀れで思わず同情してしまったものでした…。

時をかけた少女達~天下統一編~

2011.05.04
 富山の焼き肉チェーン店「えびす」で食中毒事件が起きました。(死者2人、重体1人。)原因はユッケという生肉(の中に入っていた細菌O-111)ですぐに原因にピンときた社長はユッケ用の肉を速攻で廃棄させたそうです。(ちなみにこのような食中毒が起きた場合に細菌を調べる為にも原材料は一定期間取っておかなくてはいけないと法律でも決まっておりこれは法律違反に当たる。)
 食中毒というと単なる腹痛や下痢程度の軽いものを連想しがちですが、こういうO-157やO-111などの細菌が原因の場合毒素で体内の機能が壊され「溶血性尿毒症」になる(病名通り血液中の赤血球が溶けてオシッコが出なくなる。)ことが多いのです。(農薬自殺などでよくこうなる。なのに昼メロ「桜心中」のヒロインさくらが後遺症もなく無事だったのが不思議。)尿毒症というのはすなわち腎不全の末期(この場合、急性腎不全となる。)のことをさし、その後の長~い人生一生ずっと2日に1度は病院に通う人工透析生活になることをさしてます。本来、腎不全というのは糖尿病からジワジワと悪化して60代の方々がなるパターン(慢性腎不全。でも最近は糖尿病のコントロールが上手くできるようになってきたのであまり見られない。)が多いのですが10代の若さ溢れる時期からそんな闘病生活が待っているなんて…辛すぎです。事態の重さも分からずに逆ギレ会見をしている社長の傲慢ぶりには私も嫌悪感を抱いてしまいました。
 しかし本当に恐ろしいのは今日の新聞で「そもそも肉の卸業者は食用生肉を卸したことが無い。」(つまり全焼き肉チェーン店は焼いて細菌を殺さないと危険な肉を生のままユッケとして出していた。)と書かれていたことです。要するに「えびす」以外でもユッケの中には細菌まみれだったという恐ろしい事実が判明しました。魚も活きづくりは魚肉と一緒に細菌も新鮮なので辞めた方がいい(-15度位のカチコチの冷凍にして細菌を殺した方がかえって安全なんだとか。)と言われてますし、やっぱり何でも生物は危険のようです。今まで食わず嫌いでユッケを食べたことが無くて本当に良かったと実感してしまいました。
 福島の原発事件といい今年は歴史的に最悪な年だな、という関連で歴史物を更新です。(関連してないから。)

 戦国(室町)編とリンクしている部分が多くて関連キャラを追えるのが楽しかった話です。今年の大河ドラマ「江」は第2話のヒロインの父・織田信長の姪っ子の話ですし(そしてこの家康の妻子切腹の話もちゃんと出てきてました。)読んでいてなるほどと色々な解釈にうなづいてしまいました。(最もこの大河ドラマ、ヒロインのキャラがとても戦国時代の姫からかけ離れていて微妙には感じるのですが…ゲフッ!)歴史物は解釈の違いでイメージが様々に変わるのが面白いですよね。

 1569年のShining Love…三条夫人「愛情は全部あの女に持っていかれて、私の子供は道具にされる。こんなバカな話!」

ここで言っている「あの女」とは何を隠そう戦国(室町)編の第一話のヒロイン琉璃姫(諏訪御寮人)のことです。とはいえ正室の三条夫人も男の子を3人も産んでおり(夭折、失明で2人は資格を失っていたものの。)そのまま行けばちゃんと自分の息子が家督を継いでいたはずだったので、息子の教育をしっかりしていなかった彼女にも自滅の原因はあったような…ゲフッ!元々三条夫人は正妻ではあったものの公家の出自を鼻にかけた高慢で嫉妬深い女(要するに本人の性格が悪かった。)という話もあり、だからこそ信玄は琉璃姫と勝頼を溺愛したとも言われています。今の結婚ではどんなに性格の悪い妻でもそんな女を選んでしまった男も見る目が無かったと男側にも責任が求められますが、相手を勝手に決められる家同士の結婚では特に女の実力が物を言うようです。(最も今の結婚でも「君がそんな性格だから浮気されたんだよ。」と言いたくなるような奥様も沢山いますが…。2人の仲が冷めるのは比率はともかくどちらにも原因はあるんですよね。)三条夫人は娘から性格の良さを学ぶべきでしたね。(霞姫が愛されたのは正室だからではなく氏政に真実愛されたからなのですし。他の女に目を向ける男がすべて悪い…のですが相手の目を自分に向けさせるよう努力しなかった自分にも原因はあるんですよね。)

 1579年のジェラシー…信康は家康の息子であるものの家督を継ぐ前に切腹になってしまったので「松平信康」となっています。信長の娘・徳姫との不仲は事実ですが、いくら信長でもそれだけで娘婿を殺そうとするかは疑問であり、また母親の築山御前についても女の身で裏で武田と外交できる力があるかは疑わしく(そして信長は信康の処断にしか触れてないのに何故家康は正室の彼女まで連座させて殺したのか不明。)色々疑惑の残る事件でした。また話では真実に気づけないお坊ちゃん的に描かれてる信康ですが史実によると気性が激しく日頃から乱暴で盆踊りの際に領民を面白半分に弓で射殺したり、鷹狩りの最中出会った僧に縄を付けて引き摺り殺したりの最低野郎だったようです。(話のように「俺が悪かった!」などとは口が裂けても言いそうにない性格…のような。)家康も無事に育てさえすればいいと思って甘やかした結果、成人しても教え諭しても親を敬わない男になってしまったと嘆いているのでこの性格は徳姫の夢でしょうね。徳姫との間に生まれたのが2人とも女の子だったせいで夫婦仲が冷え切ったとの説もあるそうですし(作るだけ作っておいてお前…!)果てしなく身勝手なこの男が「姫を想わない日はなかった…。」などと殊勝なセリフを吐くとは到底思えなかったり…ゲフッ!

 1582年のピュア・マリッジ…第1話で言っていた「あの女」(諏訪御寮人)の息子・勝頼の話です。(そして奥様は第1話に出てきた氏政の妹。氏政様のビジュアルが変わり果てすぎて最初、気づけませんでした。)北条夫人(この話では佐代姫。)との縁談は武田信玄の甲斐侵行で同盟が破れ一時破談になっていたものの勝頼期には同盟が復活していた為、縁談復活→継室(後妻)として嫁ぐことになりました。(なので姫の女の意思が勝ったわけでなく政略100%の縁談だったのですが…ゲフッ!)勝頼は諏訪家の通字「頼」が入っている名前(武田家の通字は「信」)からも分かるとおり当初は諏訪家だけを継ぐ予定でしたが兄貴が謀反を起こして自滅した(第1話参照)せいで繰り上がり式に家督を継ぐ羽目になってしまいました。しかし父・武田信玄の死を隠し通したつもりが多くの戦国大名に死んだことが知れ渡っていたり(隠し通せたと思ってたのは勝頼だけ。)息子にしては状況把握が甘すぎる(最後の逃亡も義兄の裏切りを読めなかったという失態があったり…ゴフッ!)など…信玄よりは確実に劣った人物であったことが武田家滅亡の一因でもあったように思えます…ガフッ!姫は元々上杉影虎を支持していながら彼が跡目を継げないと分かるとあっさり手を切った実家・北条家に幻滅していた節もあり勝頼と共に自刃して果てたそうです。水垢離までしていたかは不明ですが武田八幡宮には彼女が納めた願文が奉納されており武田を思っていた姫であったことは間違いないようです。

 1585年の聖母…わずか18歳で家督を相続した「独眼竜」伊達政宗の話です。(当時父はまだ41歳の働き盛り&自分は若輩ということで最初は辞退したのですが彼の武将の素質を見抜いていた父・輝政の決意は固く相続決行となりました。)肖像画・像の類では伊達政宗本人の遺言により両眼があるものが多いですが、幼い頃疱瘡(天然痘)にかかり右目を失明した彼は漫画のビジュアル同様片目でした。(そして天然痘罹患者なのでピョートル3世のようにブサメンの可能性の方が高いかと…ゲフッ!)その上政宗暗殺未遂事件の際、田村家方の内通者が関与していたのでは?と疑いを持たれ愛姫は乳母や侍女達を殺されたというのに夫婦の間には愛が芽生え(凄いよ、愛姫さん。)愛姫が伊達屋敷に移された折には「匕首を常に懐に持っております。決して辱めは受けません。」と政宗を内助の功で支えたと言われています。家庭を良く納め慈悲深く聡明な女性であり「愛姫」の愛称通り愛くるしい姫であったようです。こんな人を正室に持てたなんて政宗は幸せだったと言えるでしょうね。

 1615年の幼妻…漫画「天上天下」でも超過去編みたいな形でチラッと出てきた徳川家康の孫娘・千姫の話です。(天上天下自体がぶっ飛んだ話なので史実は全く関係ない物語でしたが…ゲフッ!)大阪城で秀頼と共に自害せず、他の男(本多忠刻)とさっさと再婚した為に評判はあまり良くないお姫様です。忠刻の死後すっかり男狂いになった千姫は吉田御殿に籠り、道に好みの男が通うのを見ては連れ込んで遊んだ挙句に殺し続けたという噂までたてられました。(「吉田通れば2階から招く、しかも鹿の子の振袖で。」という歌まで出来たほどだが、これは豊臣側の肩を持つ人達が流した真っ赤な嘘。実際の千姫は再婚した夫忠刻が死んだ後、出家して天樹院となり竹橋の御殿で静かに余生を過ごしている。)本当は貞淑だった彼女に対しては酷い噂ですが、しかし滅ぼされた豊臣側にしてみればのうのうと生き延びてあっさり他の男と再婚されたのは確かに恨まれても仕方ない話でもあるような…ゴフッ!(その後栄華を極めた徳川幕府を思うと余計に。)2話前の佐代姫の死に様(夫を想い自害。)を見ると確かに秀頼と運命を共にする気持ちは薄かったと取られてもしょうがないでしょうね…。仮にも戦国の姫がこんなにはっちゃけた性格になるかも疑問ですしちょっと美しく捕えすぎてるかなと思ってしまいました。

余談…まだまだ月代(てっぺんツルツル)の殿方が多い時代のはずなのに、お舅さんが月代してることはあってもヒロインの相手の夫が月代やっていることは決してないのね、と密やかにツッコミを入れてしまいました…ゲフッ!

エンバーミング①~⑤

2011.05.02
 世界3大モンスターであるドラキュラ、狼男、フランケンシュタイン(怪物くんの登場人物としても有名。)のうち「地獄先生ぬ~べ~」でも取り上げて貰えなかったフランケンシュタイン(ドラキュラ→女の精気を吸う元気功師、狼男→狼に育てられたとされた少年、とアレンジを加えられながらも2つは取り上げて貰えたんですけどね…。似た系統でゴーレム(ベースは土と水)は取り上げて貰えたんですけどね…。)の話です。妖怪としては最も神秘性から遠く人間性に近い存在である事から話を作ることが難しいと思われるだけに新境地を感じたものでした。

 ヒューリー・フラットライナー…「この復讐は俺のモノだ。それで親父やお袋、ここで殺された人達が生き返る訳じゃないけど、それでもやらなきゃ俺はこの先一歩も進めやしない。人造人間(フランケンシュタイン)は殺す!全て殺す!」

言う事が怖いレイス曰く、ヒューリーの怖い部分は「顔だけ」で性格の方はエーデルやシェイド以下屋敷の皆とも仲良しの「人好きのするお兄ちゃん」だったらしいですが復讐街道一辺倒の話の展開に「この主人公、怖いですよ…。」と引いてしまったファンもいたらしく(特にライトポップな「武装錬金」(明るく前向きな主人公)以降からのファンはギャップに苦しんだらしい。「るろうに剣心」から読んでいる私は多少グロイ・怖い・暗い展開もこの作者は描くことを知っているから許容範囲というか心の準備は出来ていましたが…。)彼の人間味(優しさも思いやりも人一倍あるいい奴)を描ききれなかったのが反省点だと作者もキャラクターファイルに書いていました。その後もエルムちゃん(赤の他人)の面倒を見たり、根が良い奴(でなければ既に死んで何も言えない人間の為に、何の得にもならない復讐なんてしないだろう。)であることは確からしいですが、だとしたらビジュアル(見た目)でかなり損をしているよな、この人…と変な所で同情もしてしまったメインキャラクターでした。

 シェイド・ジェイソン…ワイス卿「一文無しだったお前の子供が流行り病で苦しんでいるのを看たのは誰だ?私だ!高値な薬を使って痛みを和らげてやったのは誰だ?もちろん私だ!キチンと埋葬して墓を立てて弔ってやったのは誰だ?やっぱり私だ!一身一生を捧げてでもこの恩に報いると誓ったのは誰だ?お前だ!!」

彼がワイス卿に傾倒して「育ての子」であるヒューリー達を殺そうとしてまで「エーデルを取り戻すこと」に協力したのは同じ「本当の我が子を失った痛み」を知っているから(そして悲しい話だが所詮「偽物」は本物の代わりにはなれなかった。誰だって誰の代わりにはなれないというのは真理だが、その「本物1人」の為に他の人間を犠牲にするのはもっと間違っていると思うぞ。)という理由があっての行動だったそうです。が、その為に邪魔者として殺されかける羽目になった育ての子にしてみれば、いい迷惑な話(そもそもヒューリー達が孤児になったのも「実験素材の調達」の為に彼らに親を殺されたせいで、運命を狂わせたのは全部こいつら。)で、ちょっと共感はしきれなかった今までの経緯でした。挙句に、その育ての子らの扱いに関しても差があった(ヒューリーに対しては期待をかけて強い男に育て上げたが、レイスに関しては最初から見込み無しとして期待(試すこと)すらしなかった。)様を考えるとやはり「親」としては間違っていたな(そもそも育てた子(血の繋がりの無くとも我が子)でも邪魔するなら殺すってどうなんだ?)と思えて、改めてヒューリーとレイスの2人に同情してしまったものでした…。

 エーデル・ワイス…「どうしたの、ヒューリー?何で泣いてるの?ひょっとして初めての都会がちょっと怖い?…どう?こうやってギュッとすると少しだけ怖い気持ち、和らがない?」

本来、顎で使う(つまり口は使わない)はずの使用人と平気で口をきくわ、深夜の回廊を1人でふらつくわ(そんなはしたない真似、淑女はしない。)レディ(誉れ高き子爵令嬢)というよりは、おきゃんな町娘と言った方がピンとくる女性になり果てている様に(そりゃ社交界デビュー前から深刻に嫁き遅れの心配もするだろう。こんなお子ちゃまを「妻」にしたら上流階級で恥をかく事は必至です。)それを放置して好き放題させている父親(普通は鞭で打ってでも礼儀を叩き込もうとする所。娘は必ず泣く羽目になるが、礼儀作法を知らない事で嫁いだ先で血の涙を流すのも、また娘自身なのだ。)に疑問を持っていたのですが、それは人造人間(フランケンシュタイン)化した時に記憶も人格もどうせ飛ぶから、本格的な教育は「理想の姿」(黒い瞳のエーデル)になった時からで構わないとわざと放任されていたという恐るべきオチに思わず背筋が寒くなったものでした。1人「お嬢様」として恵まれていたけれど、それは代償を期待しての意図だっただったと分かり、ちょっと同情もした女の子でした…。

 アザレア・ミレー…「そうよ。資産階級(ブルジョワ)の御曹司も、訳有りの金持ちそうなお嬢ちゃんも、一回10ペンス(千円)で尻を触ってくる酒場のオッサン達も、小金持ちはみーんな私のカモ。アザレア・ミレーはセコイ人よ。」

まあ、確かに聖女とは言い難い女性だけれども、悪ぶっているのは「自分を下げて相手に嫌われる」為(それで「自分が手に入れられるもの」はせいぜい小金くらいで、彼の幸せの為に愛も住む場所も全てを失いながら身を引いている。)という物腰とは正反対の隠れた優しさに、だから成金息子のフィリップも惚れたのだろうと納得がいった女性でした。元々、婚約者のフィリップの家も「衣食足りて家名を欲す」というくだらない理由で、貧乏でも「貴族」の娘を彼に娶らせようとしていただけ(正しくは「衣食足りて礼節を知る」。人間は物質的に満たされて初めて相手への思いやりが持てる余裕が出るという意味だが、彼の父親はそれで満足せずに息子の人生を利用してまで地位を得ようとした。)ですし「人情的に」考えれば間違っていると同時に馬鹿げている話に長男フィリップは辟易していた事から今回の駆け落ち騒動に到ったそうです。が、逃げてばかりでは根本的な問題は解決しない。2人できちんと立ち向かった展開に好感を持った話でした。(ていうか次男もいるんだしイギリス元皇太子のエドワードとウォリス夫人のように廃嫡して弟に任せる選択肢もあると思うのですが…。)

 メアリ・ジェーン・ケリー…ヴァイオレット「私、知っているのよ!離婚された腹いせに父さんから攫うように屋敷から私を連れ出した事も!そのくせロンドンでは育児を面倒臭がってゴミと埃だらけの部屋に私を置き去りにしてロクに帰ってこなかった事も!娼館の女主人に私を担保にして借金をした事も!自分がどんな母親だったか忘れたの?今さら何しに出てきたの!?」
ヒューリー「そうだ。確かに生前のメアリはエーデルの言う通りの悪女で、だからこの人造人間メアリは…狂っているんだ。」

確かに恥があったら今さら娘の前に顔など見せられないはずですが、気が狂ってその辺の「常識」を忘れた今の母親(その死に様が室内で2時間かけてのバラバラ殺人だったという内容を考えれば、気が狂うのも無理はない痛い結末だったでしょうね。←他の犠牲者は野外での短時間犯行という事もあり切り裂かれたのは喉だけでミンチにはされなかった。700年も続く伝統行事・シティ市長の就任パレードの時期に合わせて「目立った事件を起こす」為だけにこんな目に遭わされたのだから思えばメアリも浮かばれない女性である。)には「最後に娘に会いたかった」(最後に娘に何かしてやれば良かった。)という思いしか残らなかった様子でした。(生きている頃は見舞い一つ来なかったくせに「死んだ」とたんに喚き出す↑のような人間は本当によくいる。「じゃあ普段からもっと大切にしてれば良かっただろう。」という常識的ツッコミはそこには届かないらしい。)「検死審問」によると生前は「自称25歳で炭鉱夫の夫はガス爆発でなくなり、父親は鉄工場の職工長、兄は近衛歩兵連隊所属」という経歴を吹聴していたそうですが、どれ一つ裏付けが取れず(最も真実であっても「売春婦なんて恥ずかしい娘は家族にいません!苗字がたまたま同じだけの他人です!」と家族は否定するだろうが。)メアリの経歴は「全部デタラメかもしれない」という解釈からこのようなドラマを成り立たせた展開には思わず舌を巻いたものでした…。

 切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)…ピーベリー「こいつは下水道を住み家にしていて逃げ道に精通していた。その上。元々の身体能力も高く警察に一度も捕まる事は無かった。結局の所こいつの最後は周辺住民の手による私刑(リンチ)…」
リッパー・ホッパー「何だ?俺は生き返ったのか?頭がボーッとして良く分からねえ。けど、ただ一つハッキリ分かる。名も無く誰にも知られること無く惨めに死ぬのはゴメンだ。あんな『終わり』は2度とゴメンだ!」

自分の娘(売春婦)を生きたまま解体された人間は職業貴賤を問わず犯人を許さない。下水道どころか地獄の果てまで追いかけて復讐を果たすだろうし、ましてやイーストエンドという英国一安全と程遠い地域では長生き出来るはずも無いだろう(そして、この手の犯人は捕まるか殺されるかして物理的に犯行が不可能な状況に陥らない限り辞めはしない。羊達の沈黙風に言えば「犯罪を犯す事が犯人にとって既に『趣味』になってしまっている」からである。)と犯人が実は人造人間だったというフィクションが加えられたとはいえ、結末にはかなりのリアリズムを感じたものでした。切り裂きジャックが英国中に知れ渡った後に突然「消えた」のは、有名になり過ぎて自粛したというより、事件を知った皆が「証拠は無い」けれど物理的に「奴」以外には犯行が不可能だとしか思えない人間に秘かに私刑を下したから(で、人造人間になるなんて現実には無理だから漫画のように蘇りはしなかった。)と考えると全てに納得がいって、史実とちゃんと辻褄を合せた事と合わせて唸らせて貰った展開でした…。

 レイス・アレン…死体卿「聞けば寒冷地で死んですぐ人造人間になり、調べれば余計余分な機能は一切備わっていない。これまで数多の人造人間を観て来たが、これほど新鮮(フレッシュ)で単純(プレーン)な死体は初めて。失われたエグゾスケルトンの精神を再構築する、その寄り代(生贄)として最高最適故に、彼は特別なのだよ。」

まさか「何の取り柄も無い」という特徴がそんな風に活用できるなんて…と思わぬパワーアップ(と、その代償として死体同然に動けなくなってしまった結末。)に驚かされた展開でした。実の親には虐待されて育った為に復讐に生きるヒューリーみたいに家族を殺されても何の感慨も湧かず(育ての親であるシェイドには育てては貰ったものの「こいつ、ヒューリーに比べらたら出来の悪い男だなあ。」と幻滅されていたので信頼関係は芽生えなかった。子供は虐待されなくても差別されると分かるものなのだ。)「ヒューリーに期待していいのは僕ただ一人!僕の期待に応えてくれるのもヒューリーただ一人!」(なんか、すっごく寂しい人間だな…。)と自分を助けてくれたヒューリーに余計に執着するようになった様子です。が…親に虐待(ネグレクト)されて育って、人造人間に殺されかけて、ヒューリーが一生懸命助けようとしているって、正に今のヴァイオレット(エーデル)の事じゃないか(「エーデル」を殺す事は自分自身を殺すも同然だった。)と自分の「間違い」にここに置いてようやく気付いた模様でした。その結果が自分が殺される事を受け入れる事だとは悲しい話でしたが…。

 余談…「ノック2回はトイレ、3回は知人・友人・恋人など親愛なる間柄、4回が仕事先など礼儀を必要とする場所」でありそれ以上は絶対の殺意だと書いてありましたが、トイレでも「ちょっと!早く出てよ!ドンドコドンドンドン!」と5回以上叩く事はあるし(この場合、微妙に殺意もこもっていますが。)「これはあくまでも一説に過ぎない」という但し書きに納得したものでした。

 追記…ヒューリー(怒り)、レイス(死霊)、アシュヒト(アッシュ(灰)になった人)、エルム(楡の木。花言葉は信頼。)、エーデルワイス(大切な思い出)、アザレア(あなたに愛される喜び)、ヴァイオレット(小さな幸せ)、タイガーリリイ・コフィン(賢者)という花言葉を中心とした名前に、コフィンは「棺」という意味、エルム(楡の木)が棺桶にするのに最も高級な木である事実と合わせて(どうやらポーラールートでは不吉極まりない名前ばかりが流行していた事が分かる。)意味を持たせてある様になるほど!と思えたネーミングの由来でした。

エンバーミング⑥~⑩

2011.05.01
 何故、俺はこんな事をしてしまうのだろう、どうして俺は「普通」に出来ないのだろうと思いながら奴らはそれをする。奴らは動きを止めると溺死する鮫と同じだ。奴らは自分がしている事を分かっている。その結果どうなるのかも含めてな。だが辞められないのだ。何故なら奴らは自分の預かり知らぬ手の届かない所でそうするように仕組まれてしまっているからだ。理由を知っているのは奴らを作り上げた者達だけだろう。「フランケンシュタイン」は架空の話ではない。あれは現実を単に書いただけなのだ…という風に頭のおかしい殺人者を語っている小説「ダイナー」(著・平山夢明)の一説に、同じようにやたらめったら人を殺すイカレた人造人間(元人間)が多く出てくるこの話とシンパシーを感じて色々考えてしまったものでした。(話のヤバさ、救いようの無さは「ダイナー」の方が断然上ですが。)という訳でこっちの話は「死んだ人間にやり直しはきかない」事は同じでも、ある種の救いを持った終わり方で終了です。

 ジョン・ドゥ(正体不明の死体)…アシュヒト「お前達、結婚するんだって?こいつはプータローだぞ!なのに奥さんの方まで仕事辞めちゃうって、アンタら、これからどうやって生活していく気なんだよ!?」

仕事を辞めるのは個人の自由だが、それは新しい就職先が決まってからの話にした方が良いぞ(特に草刈りや土木作業などの汚れ仕事を全部、人造人間に押し付けて、人間の手間が無くなっているこの町では肉体しか取り柄の無い夫・ジョンは半永久的に無職(プータロー)から脱出できないだろう…適した仕事が無くて。)と思わず奥さん(ヒルダ)にもツッコミも入れてしまった2人のロマンスでした。グロイ描写にも暗い展開にも「るろうに剣心」で耐性はついていたけれども、まさか「事後」とはいえ思いっきり「思わせぶりな描写」(素っ裸での起床。ジョンの方も真っ裸で風呂から出てきたし、もはや「誤解」のしようは無い。)を、あの和月先生が描かれたのに驚きながらも、この「人好きのするお兄ちゃん」の幸せに素直に拍手したものでした。おかげでエルムちゃんをぶち殺して蘇った非情な殺人鬼と化した「現在のジョン」は対比と合わせて、あんまり好きになれなかったりしています…。(それにしても、ジョンが法廷に立っている時といい、ヒルダが印つきとして牢獄に入れられている時といい、パンツくらい与えてやれよ、ポーラールート!と別の所でツッコミも入ってしまった過去編でした…。)

 トロイマン・ワーグナー…ワーグナー「ポーラールート崩壊、その原因は色々あろう。だが、その一つが職務を全うできなかった私の非力。もはや誇りなど欠片も無い。だが親の代から受け継いだ理想郷を次の代に引き継げなかった身として、せめて生き残った市民だけは無事、外の世界に…。」
ジョン「アンタ、真面目だねぇ。そんなんで人生楽しいか?」
ワーグナー「…そうだな。楽しくはない。だが、充実している。」

10年前のその時は、日本の警察と同じく自分の立場を守る(職場の椅子を温める)事を優先して、本来の使命である弱者(女子供)を守る事さえ仕事を言い訳にしてなおざりにしてきたけれど、バカ男時代のジョンの単純明快な行動(自分はバカですら行う「男として当たり前の行動」すらやっていないという現実。)、そして保身大事に行動した結果、結局、理想郷崩壊時に何もできなかった責任を感じた事も有り、彼も変わった様子です。(犯人探しは興信所、罰をあたえるならヤクザという定説まであるように、最早、民間企業にすら劣っている「日本警察の皆さん=正義の立場にいながらデスクワークを言い訳にして交通違反のノルマ以外は何もしない寄生虫」にも見習ってほしい位だ。)もう故郷も職場も立場も無くなっているのに、使命(弱者を守る)の為に命をかけて散った最後には、知らず、感動してしまったものでした。おかげで「かつてのジョン」も一瞬だけ目を覚ました様子(そのまま一瞬で消えなきゃ良かったのに。)ですし、変わり果てた「現在のジョン」にも感じる物が有ったのでしょうね。

 タイガーリリイ・コフィン…ヒルダ「どうせ最期だ。自分の記憶も自身の存在も自分自身で選べばいい。」
タイガーリリィ「そうだな。私は人造人間タイガーリリィ・コフィン。統率のナンバー2だ。…さあ、約束を果たせ、先生。」

起動した後の思い出は全部、嘘偽りで、あれほど慕っていた死体卿からも「便利な手駒」として扱う為に騙されていただけだった…それでも騙されていても楽しかったというか「統率のナンバー2」として頑張ってきた自分の気持ちには嘘偽りはなかった(「嘘がどうした!偽りが何だ!幻だってかまわない!それでもあの時感じた夢のような心地こそが私が始めて感じた幸せだったんだ!」byリリィ)それが胸を張って言える彼女だけの真実だったのでしょうね。そして戦った結果、ジョンに半殺しにされ、アバーラインにも情けをかけられた(プライドが高いだけに「自分はもう、こんなコミカル系の雑魚にまで同情されるレベルに成り下がってしまったのか。」という状況は辛いだろうな。)という展開に、何だか可哀想になってしまった女戦士でした。最後は信頼していた先生に看取って貰えたのが救いでしたが、生前の彼女が言っていた通りに「たとえ下等でも人間として生きた方がマシ」だったと思うと切ないです…。

 ヒューリー・フラットライナー…「どうやら終わりが来たようだ。もう思い残すことは無い。もう安らかに死なせてくれ…。」

御大登場…とはいえそもそもポーラールートとは全く関わりの無い人間で、本人の話(レイスとの愛憎劇)も既に終わっているし、後半に置いてあんまり重要性を感じられなかった3主役のうちの1人でした。(それでも「全く関係の無い他人の事情」の為に魂を使い果たしてまで戦ってくれる辺り、この人はやっぱりいい人なんだろうな。)仇を撃つ事も出来ず、友人(レイス)も救えずに殺されて驚愕と絶望の表情で死んでいた生首ヒューリーが、やれる事は全部やれたと心から満足して笑って死ねた(奇しくもエーデルを殺した人造人間に復讐を果たす事もできたし、ヴァイオレット(本物エーデル)の命も救う事が出来た。)様には、同じ生首の姿とはいえ拍手した終わり方でした。最終ページではエーデル、レイスの墓と3基微妙に離れた距離(何故あんな斜めの向きに…。)で同じ土地に眠っている様子ですし、彼の人生が幕を閉じた後ジョンが残り僅かな人造人間を倒して世界は元通りになった…という事なのでしょうね。

 エルム・L・レネゲイド…アシュヒト「エルム…このまま本当に君を黄泉返らせる事が出来ても、ボク(12歳の私)がもう此処にいない。あの日からの続きは、同じ歳月を歩む事はもう出来ない。過ちはそのままに…僕達はもう2度と、会うことはできない。」

共に歩む歳月が記憶と人格を作り、魂や心を育むのならば、あの日、喪ったエルムとは共に歩めなくなった時点でとっくに終わっていたんだ…というどうしようもない真理に10年も経った今更になって悟ったというのは思えば痛い展開です。(いっそ本物エルムの方も人造人間化して両手に花の展開にしてしまう、というのはやっぱり無しなのか。)とはいえ、それまでずっと人造人間エルム=人間エルムのなれの果て(肉体は同一)と思っていただけに、まさか死体卿の言う通りに本当に「2人いた」とは思わず、アホの子の方が選ばれた展開(まあ、あれだけアシュヒトの事を想ってきた子が利用価値が無くなったからという理由だけで捨てられるのは読者も許さないだろうが。)と合わせて驚かされたものでした。惜しむらくは人造人間の方が選ばれたにも関わらず彼女の方も余命いくばくも無いという点でしょうか?眠るように苦しまずに死ねるし、死後も友達(人間エルム)が待っていてくれているのが救いですが、色々切なく感じてしまった終わり方でした…。(それにしても、まさかの「女の友情エンド」とはね…。)

 大創造主ゲバルト・リヒター…「家族が欠けた…もう2度と元には戻らない。私の楽園が失われてしまった…。今度こそ私は揺らいでしまうのか…?否!しからば心機一転!新たな家族を作って、新たなる私の楽園を目指せば良いのだ!」

うわ、立ち直り、早っ!と、その百面相と合わせて思わず吹いてしまったアシュヒトのお父さんでした。病気(寿命)で亡くなった妻を10年も忘れずに想い続けた(普通だったら死後1年位で周りの友人も「そろそろ次の人の手を取ってもいいんじゃない?」と勧め出し、とっくの昔に再婚している。)辺りの一途さは息子に通じる所があるのでしょうが、本当に相手の事を思うのなら生前の彼女(母)の遺志通りに「年月を重ねる事も、成長する事も出来ない死体」として生きるのは「幸せ」ではないだろう(だからって亡骸を傷つけるのはやり過ぎだと思うが。)と意見が別れた父子の相違です。才能がありながらも好きにはなれなかった創造の仕事(「お前、つまらなさそうだな。」「つまらんよ。こんなの粗大ゴミを組み立てているようなものだ。」とトートと会話している通りのただの器用貧乏。)から察しても彼にとって妻のダリアが全てだった(妻と一緒に過ごした日々が「楽園」(エデン)だったって…。)が伺え、10年以上追い求めた夢が息子同様に叶えられずに終わった様には、思えば悲しい人でもあったなと同情もした大創造主でした…。

 死体卿トート・シャッテン…トート「人間に興味は無いんだ。僕と仲良くしたいのなら、一緒に暮らしたいなら、死体にならなきゃ。…分かっている。僕は死体に生まれたかった。」
ジョン「じゃあ死ねよ。死ねば、てめえの周りに生きてる奴は一人もいねえ。死んだ奴しかいない、お望み通りの死体の楽園だ。」

ジョンの言うとおり「死体になりたい」のなら今すぐにでも首を括れば願いは叶うでしょうに、周り中の人間を巻きこんで、その為に大量の死者も出した様(死ぬなら1人で死ね!)には、結局こいつが願っていた事は「自分を王様とした、何の文句も言わない人達(死体)にかしずかれる国」を作る事だけ(それは妄想だけで済ませて下さい。)で、本気で死にたいとも、自分の異常性を改善しようとも考えていなかったんだ、というゲスな本音が垣間見えたものでした。大創造主ももっと助手にする人間は選んでほしかったというか、律儀に彼との約束なんか守らずに死なせてやればその後の犠牲者は出なかったでしょうに(そして素体の誤魔化しも「死人に口無し」でバレる心配は無くなったでしょうに。)気違いが2人して選択を誤りまくったせいで起きた悲劇には、もう涙するしかありませんでした。おかげで駆け足で死んでくれた最後がとても小気味良かったです。
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